東村山市第七中学校での活動

有山正孝、大井みさほ、奥田治之、小林憲正、西原寛、和田勝会員が、11月12日の午後に、東村山第七中学校で、2年生の生徒150名に対して実験授業を行いました。この活動は「東村山夢と希望プロジェクト」から依頼されて行う出前授業で、2年生の生徒全員が6つに分かれて、それぞれのテーマを午後の2コマの授業を連続して行いました。

本来は9月に行う予定でしたが、新型コロナの緊急事態宣言発出のために延期となりました。その後、Zoomによるリモート会議を同校の副校長先生と1回、さらに理科担当の先生を加えて1回行い、またメールのやり取りにより内容や準備の相談を行い、宣言が解除された上記の日付に実施される運びとなりました。

授業は昼休み後の午後13時30分から15時15分まででしたが、各会員ともに午前11時には学校に集まり、ひと休み後に各教室に分かれて準備を行いました。当日のテーマは以下の通りです。西原寛会員「金属の不思議-金の色を変えてみよう-」、和田勝会員「ゾウリムシで遊ぼう、学ぼう」、小林憲正会員「宇宙人は左きき?-生命の起源を右と左で考える-」、大井みさほ会員「光の進み方を調べてみよう」、奥田治之会員「レンズのはたらき、望遠鏡のしくみ」、有山正孝会員「モーターはなぜ回る?」。各会員からの報告書と、プロジェクトの責任者である富摩照夫さんから頂いた授業風景の写真を使って、当日の模様を再現してみます。

「金属の不思議-金の色を変えてみよう-」(第1理科室・西原寛)

1時間目は、金属にはどんな違いがあるのかを、金・銀・銅・亜鉛を使って、化学的な安定性を実験や観察を通して比べて考え(テーマ1)、2時間目は、同じ物質でも原子の集まり方によって、色が変わることを、金を用いて観察する実験(テーマ2)を行いました。

スライドを使って説明する西原 寛会員

テーマ1では、中学2年で学習した「酸化」と「還元」の定義の拡張について説明したあと、生徒は、酸化された金(塩化金酸ナトリウム)の水溶液, 酸化された銀(硝酸銀)の水溶液、酸化された銅(硫酸銅)の水溶液に金線、銀線、銅線、亜鉛線を1,2分浸して、線の表面の変化を観察しました。
たくさん変化する金属を選んだ生徒は、色々な形態のものが表面に生成する様子を観察して記録に勤しむ一方、全く変化しない金属を選んだ生徒は「金は最強だ」などとおしゃべりになっていました。
班として、各生徒の結果を総合して、変化が起こらない順番に金属を並べ、化学的安定性と酸化・還元についての理解を深めてもらいました。

化学的安定性を比較する実験

テーマ2では、多くの原子からなる1㎝3の金の塊は金色だが、金原子1個では無色になると予測されること、原子が数百から数千個集まった直径が10~100 nmの金のナノ粒子では、金色でない色を呈すること、そして金のナノ粒子を合成するには、酸化された金を還元して原子1個をつくり、それを集合させる方法を用いることを説明しました。

金原子の数と色の関係は?

説明の後、生徒は、金ナノ粒子の生成と変化の実験を行いました。具体的には、沸騰した塩化金酸水溶液にクエン酸ナトリウム水溶液を還元剤として加え、色の変化を観察しました。ほぼ無色だった溶液の色が、数十秒後には段階的に激変する様子を生徒たちは見入っていました。

クエン酸は酸化された金を還元し、凝集した金原子を取り囲んでナノ粒子を作る

5分加熱を続けた後、少し冷まし、その溶液の一部を塩化ナトリウム粉末の入ったバイアル瓶に入れ、溶液の変化を観察しました。溶液の色が変化し、微粒子が生成したことを確認した後に沪過を行い、ろ紙に集めた粉末をミクロスパーテルでこすって変化を観察しました。
この作業で、金色の部分が現れることを予定していたのですが、残念ながら、その観察ができた班はありませんでした。この段階で残り時間が短くなり、十分に粉末を集められなかったためと思われます(次回の実験授業の課題です)。

最後に、今日、行った実験の結果について解説を行い、授業を終了しました。

「ゾウリムシで遊ぼう、学ぼう」(第2理科室・和田勝)

江戸川子ども未来館での小学生に対する活動では、導入としてゾウリムシを細胞の一つとして観察させ、タマネギ鱗茎葉表皮細胞の観察、ヒト口腔上皮細胞の観察と続き、生物が細胞が集まってできていることを実感させてきました。中学2年生では授業で多細胞生物を学習し、タマネギの細胞はすでに観察しているので、ゾウリムシのさまざまなはたらきを観察して、多細胞生物であるヒトの体のつくりや仕組みと比較し、ヒトの体の成り立ちを考えるという方向にしました。

選んだゾウリムシのはたらきは、運動(繊毛による遊泳)、浸透圧調節(収縮胞の動き)、摂食(食物の取り込みと食胞形成)です。
最初はシャーレに取り分けたゾウリムシを肉眼で眺めてもらいました。ゾウリムシの大きさを実感してもらうためです。

ゾウリムシの運動 観察1 次にスライドグラスにゾウリムシを含む水を一滴、滴下し、カバーグラスをかけて観察してもらいました。ゾウリムシがどのように遊泳しているかを観察してもらい、どうしてこのような動きが起こるかを考えてもらいました。

顕微鏡を繋いだ大型のビデオモニターがあったので、ゾウリムシを映して、繊毛が動いているさまを提示することができました。

実験1 次に、塩化ニッケル水溶液を加えると、繊毛運動が停止することを観察しました。

繊毛が曲がることを説明するために、10㎝程の2本の細いビニールチューブを両端と真ん中の3か所を輪ゴムで束ね、片方をずらすとチューブが曲がることを示しました。たくさんの人が次々と肩車をして高くなり、その人柱が2本、接して立っていることを想像します。後ろに配置した人が、それぞれ前の人柱の人の肩に両手をかけ、勢いをつけて一つ上の人の肩に這い上がっていくイメージだよと、生徒の肩に手をかけて説明しました。

繊毛の中にもこのようなチューブが9本(真ん中には2本)あって、ずれることによって屈曲します(繊毛の断面図を使って説明)。この動きにはエネルギーが必要で、塩化ニッケルはそれを阻害するために運動が停止することも付け加えました。

ヒトでは繊毛は気管上皮細胞にあって、吸入した異物を粘液が捕捉して繊毛運動によって口に戻して痰として吐き出すことを説明しました。

ヒトが運動するときには筋肉の収縮が起こります。筋肉では、上に述べたような棒がたくさん並んでいて、両端が隔壁と結合しています。たくさんの棒が滑り込むことによって隔壁間の間が短くなり、結果的に収縮が起こることを図を使って説明しました。

ゾウリムシの収縮胞 観察2 次に、メチルセルローズでゾウリムシの動きを止め、収縮胞を探してもらいました。見つけた収縮胞は、1分間に何回ぐらい収縮をするかを数えてもらいました。
顕微鏡につないだモニターにゾウリムシを映して収縮胞を示しましたが、生徒はなかなか収縮胞を見つけることができず、ちゃんと数を数えられた生徒はいませんでした。
本来なら蒸留水の代わりに食塩水を加えて、収縮の数が減ることをやりたかったのですが、そこまではいきませんでした。
ゾウリムシでは外界の水が細胞内に入るために水を排出して細胞内の塩分濃度を一定にしていることを説明し、これを浸透圧調節という、と付け加えました。下の動画はサイトのための参考です。NHKに感謝します。

NHK for School ゾウリムシの収縮胞より転載しています。

ヒトでは細胞の周りは浸透圧が一定の体液で包まれているので、個々の細胞では調節を行わず、腎臓がまとめてその機能を果たしていることを図を使って説明しました。

ゾウリムシの食事の仕方 観察3 最後に、あらかじめ用意しておいた乾燥酵母菌をコンゴーレッドで染色したものを配り、ゾウリムシが食胞として取り込むことを観察してもらいました。体の中が赤くなっている、という声が上がったので、観察できたのだろうと思います。

ゾウリムシは、先端から縦軸に沿って凹みがあり、そこにある繊毛によって餌を細胞口へ送り、そこから食胞として取り込みます。取り込まれれた食胞は消化酵素を含む小胞と融合して、食胞内で消化されることを説明しました。

ヒトではどのように消化しているかを尋ねました。ヒトの場合は消化酵素を細胞外(消化管の中)へ分泌し、消化してアミノ酸やグルコースになったものを小腸の絨毛上皮細胞から取り込んでいることを、図を使って説明しました(小腸絨毛から取り込むと答えた生徒がいました)。

最後に単細胞生物は、一つの細胞ですべてをこなすが、多細胞生物ではそれぞれの働きを分業していることを言い、どうして分業方式を取ったかを問いました。

生徒は積極的に課題に取り組んで楽しんでいたと思います。終わった後で一人の生徒さんが、「とても面白かったです、ありがとうございました」とわざわざ言いに来てくれて、うれしかったです。用意した課題のすべてをこなせなかったので、進行については反省すべき点がありました。今後の課題です。

「宇宙人は左きき?-生命の起源を右と左で考える-」 (多目的室・小林憲正)

6名ずつ4班に分かれてもらい,分子模型セット,コガネムシ,左右円偏光フィルター,鏡を各班毎,パワーポイントのハンドアウトと質問の解答用紙を各生徒に配布しました。講義は3つのパートに分かれます。1)私たち(地球人)はどのようにして誕生したのか?、2)地球以外にも生物はいるのか?、3)私たちはこのさき、どうなるか?です。質問に答えてもらいながら、講義は進みます。

私たち(地球人)はどのようにして誕生したのか?
地球上にはたくさんの生物が生息しています。そもそも、生物と無生物の違いは何ですか?という質問から始まりました。このような多様な生命が、地球上でどのように誕生したのか,どのように進化してきたのか、どのように説明されているのか、スライドを使って説明しました。

地球が誕生したのが46億年前、それから10億年たったころに、生命が地球上に誕生したと考えられています。ミラーの実験が示すように、原始地球上で雷による放電によってアミノ酸などの有機化合物が作られたと考えられています。生命は、これらの素材をもとに生まれたのです。こうして生成したアミノ酸などは、右左の偏りがあります。通常の合成過程では、右利きと左利きのアミノ酸は半々に合成されますが、地球上の生物の構成要素であるタンパク質は左利き(光学的に左旋性)のアミノ酸から構成されているのです。アミノ酸のような生体分子が左右対称でないことが重要であることを解説しました。

実習として,分子模型を使って,3つの結合手をもつ黒い原子に3つの異なる原子(団)を付けた場合に、どのような形になるか、次に4つの結合手をもつ黒い原子に4つの異なる原子(団)をつけた場合,どのような形になるかを体験してもらいました。

前者では赤と黄色を付け替えても裏返せば同じになるので1種類のみ、でも後者では2種類の分子(鏡像異性体)が可能なことがわかります。

炭素原子 は4つの結合手を持つのです。

次に,コガネムシの翅を左右円偏光フィルターを通して観察すると異なった色に見えること,鏡に写した場合は結果が逆になることを確認してもらいました。ちなみに、偏光には直線偏光と円偏光があり、直線偏光は振動が一平面上にあるのに対して、円偏光では円を描き、右円偏光と左円偏光があります。下の動画は右円偏光です。さらにちなみに、自然光はこれらの光がすべてランダムに混ざった光です。

円偏光ってなに? (starman.biz) より。進行方向で見て反時計回り、すなわち右円偏光

コガネムシの翅の色が左右の円偏光板で変わるのは、翅によって反射された光が左回りの円偏光だからです、構造色の一種ですね。コガネムシの翅を構成しているクチクラ層は多数の棒状分子積み重なっているのですが、分子の向きが少しずつ変化して積み重なっていて、左巻きのらせん構造になっています。そのため、そこを通過した反射光は左回りの円偏光になるのです。反射しなかった右円偏光はこの層を通過して吸収されて熱に変わります。円偏光が、コガネムシにとってどのような役割があるのかはいろいろな説があります。

コガネムシの翅の円偏光反射については下記のサイトで詳しく説明されています。円偏光を反射するコガネムシ円偏光を反射するコガネムシ(続き)コガネムシは円偏光(第3版)

これらのことから,地球生命が分子レベルで非対称であること,それが生命の本質に関係することを考えてもらいました。

なぜ地球上の生物は左利きのアミノ酸のみを使っているのかについては、いろいろな仮説があって明確にはなっていないのですが、近年、オリオン座大星雲から広範囲に円偏光が放出されていることが観測されました。そこで一つの仮説として、太陽系はオリオン座大星雲のような大質量星形成領域で形成され、その後、大規模な円偏光に飲み込まれて片一方の円偏光の照射を受け、左利きアミノ酸に偏ることになった、というものです(ここを参照してください)。

地球以外にも生物はいるのか?
後半は,地球外生命の存在の可能性について,いくつかの質問を通して考えてもらいました。地球でも様々な極限環境に生物が存在していることから,太陽系でも火星,エウロパなどの天体に生命が存在するかもしれないこと,その探査が行われていることを紹介しました。太陽系外は電波による探査(SETI)が行われていますが,その成否は,文明の寿命に依存することを紹介しました。

私たちはこのさき、どうなるか?
最後に、これまで述べてきたことから、地球外生命を考えることは私たちの環境・文明を護っていくことにも通じることを理解してもらいました。

「光の進み方を調べてみよう」 (調理室・大井みさほ)

初めに光とは何かの話をしました。光は電磁波のうち、狭い意味では眼に見える波長の範囲ものを言い、波長の違いが色になります。光は波の性質を持っていますが、粒子の性質も持っています。屈折や反射、干渉や回折は、波でなければ説明できない現象です。しかしながら、物質に光を照射すると電子が放出されたり電流が流れたりする現象(光電効果)は、光が粒子であるとしなければ説明できません。つまり光は、波と粒子の両方の性質を併せ持っているのです。光全般についての役立ちそうなサイト(キャノンサイエンスラボ・キッズ)です。

光の速度を測ろうとする試みは、既に17世紀に行われています。その後、いくつかの試みが行われましたが、現在では、世界の幾つかの研究所でレーザーでの測定を積み重ねた結果、その速さは定義値である299792458m毎秒になった話もしました。

さらにレーザーの原理について説明を行いました。レーザーはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの語の頭文字をつなぎ合わせたもので、レーザー光発生の原理を言い、この原理による発生装置のことをレーザー発振器と言い、発せられた光をレーザー光と呼びます。レーザー光は、自然光と違って、波長と位相がそろっていて指向性(直進性)の強い性質があるために、ここで扱う実験にはとても適しています。指示棒の代わりに使うレーザー発振器は、レーザーポインターと呼ばれます。

レーザー光発生の原理を簡単に書いておきます。原子にエネルギーを与えて励起状態にし、励起状態から元の基底状態に戻るときに光が放出されます。放出される光の波長(色)は原子の種類によって異なります。原子を閉じ込めた管にたくさんのエネルギーを与えて励起状態の原子を増やし、同じ周波数の光を照射すると、励起状態の原子が連鎖反応的に光を放出するので、これを管の両端の鏡で反射させて往復させることによりさらに光は増幅されます。こうして増幅された光を片側の部分反射鏡を通過させて取り出したものがレーザー光です(参考になるサイト)。ただし、レーザーポインターは半導体(レーザーダイオード、LD)を使っています(参考になるサイト)。

赤と緑のレーザーポインターを使って、空気中と水中で光の進む様子を観察しました。

「レンズのはたらき、望遠鏡のしくみ」(少人数教室・奥田治之)

透明なアクリル板で作った水槽の水に散乱体を入れて、レーザービームの通り道を可視化します。これを使って、光の様々な性質を示す実験を行いました。まずは3本のビームが直進している様子です。

水槽の右端に凸レンズを置くと、このビームは焦点を結びます。レンズによる屈折ですね。

光の反射の様子を示します。背後に分度器を置いて入射角と反射角が同じであることを読み取れるようにしています。

光が水からプラスチックに入射した時の屈折の様子。ここでも分度器を背後において、入射光と屈折光の角度を読んで、屈折の法則が確かめられるようになっています。

続いてレンズのはたらきによる屈折、点光源から出た光が凸レンズによって一点に集まることを示しています。

このレンズの屈折の働きを利用したのが、望遠鏡です。どうして遠くの物が拡大して見えるのか、望遠鏡の仕組みを説明しました。望遠鏡は、2枚のレンズを使います。接近不可能な遠方の物体の像を焦点距離の長い対物レンズで至近距離に映し、それを焦点距離の短い接眼レンズ(虫眼鏡)で拡大して見ているのです。

https://star-party.jp/owner/?p=1174より拝借

対物レンズの像を半透明の紙に写し、それを接眼レンズ(凸レンズ)で拡大して見るということを2つの紙筒を使って示し(下の写真の左端と真ん中)、上に述べた望遠鏡の原理を理解してもらいました。あらかじめ紙筒で作った簡易な望遠鏡(下の写真の右端)を使って、像を見ながら、紙筒を前後させて焦点調節をするということも実体験してもらいました。
望遠鏡の作ろうというJAXAの製作したYouTube動画を載せておきます。

JAXAのページより

その後で、本物の望遠鏡を見せて、その構造を説明し、屋上から、周辺の景色(富士山など)を見て、望遠鏡の使用法を実体験してもらいました。

ケプラー式望遠鏡ですから、像は上下逆転してしまいますが、こんな富士山が見えたようです。

ちょうど上弦の月が出ていたので、それも見てみました。クレーターが見えると言って、生徒さんたちは喜んでいました。

当日の月例は7.2で、もう少し左に膨らんでいます。

 生徒さんたちは、光や、レンズの性質を可視化して見ることなどに興味を示してよく観察し、実感的に望遠鏡の性質や構造を理解できたようです。最後に、望遠鏡の歴史やそれによる天文学の進歩などを簡単に説明しました。

「モーターはなぜ回る?」 (数学室・有山正孝)

ゼムクリップを使って簡単なモーターを作って、モーターはなぜ回るのか、回るためにどのような工夫が必要かを考えるのが、今回の主なテーマです。

小学校で学習した電流の磁気作用、電磁石の復習から出発しました。実験1 方位磁針に銅線を流れる電流を近づけると、磁針が動きます。電流が磁力を発生しているのですね。1820年にデンマークの物理学者エルステッドが初めて気づいた現象です。

ここからお借りしています。

実験2 つまり、銅線を巻いたコイルに電流を流すと、磁石になるということです。

ここで、磁界という概念を導入します。これは中学校でこれから学習することです。
実験3 棒磁石の周りには、磁力線で表すことができる磁界が存在します。下の写真の鉄粉による縞模様が磁界を表しています。

https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/chu_2/ene/jikai/3-3-1/3-3-1-4.htmlよりお借りしています。

実験4 直線電流の周囲にも、同じように磁界が発生します。

以上のことをまとめた動画があります。3分31秒とちょっと長めですが。

ここからモーターへ移ります。電流を流すと磁石になる、2つの磁石のNとN、SとSは反発する、というところから始めます。
実験5 このことを示すが電磁ブランコです。電流を流したり切ったりすると、コイルがブランコになります。

このコイルの動きを回転運動にするためにはどうしたらよいでしょうか。必要な工夫について考えてみましょう。考え抜いた末に、教科書にも記載されているクリップモーターの作成を各人に行ってもらいました。

大部分の生徒が、限られた時間内にコイルを回転させることに成功しました。生徒は休憩時間中も工作に熱中していました。生徒数に対して十分な数の指導者が確保できれば、全員に成功させることができるのですが、今回それが叶わなかったのは残念でした。

今回のものではありませんが、参考に。

クリップモーターの作り方を写真入りで丁寧に解説したサイトがここにあります。

磁石と電流によって回転をする軸を作ることができれば、水車や風車に代わる動力源になる可能性があります。電流の磁気作用が発見されたのは1820年、最初の実用的モーターが完成したのは1834年!です。原理がわかっても(科学)、実際に使えるように実用化するためには工夫が必要です(工学)。

実験6 電磁ブランコで示したように、磁石と電流の流れている導線を近づけると力が働いて動きが起きます。それなら逆に、電流の流れていない導線を磁石に近づける、あるいは電流の流れていない導線に磁石を近づけるとどうなるでしょうか。次の写真のように、コイル、ネオジム磁石、検流計を用いて、磁石をコイルに近づけると、磁界の変化により導線に電流が発生することが観察できます。これが、電磁誘導です。

実験7 次に4~5名のグループで磁石の運動によってアルミの鍋蓋を回転させる実験(アラゴーの円板)をしました。アルミは磁石にはくっつきませんが、磁石を回すと、あたかも磁石に引っ張られるように回転します。これはアルミ板に外向きの渦電流が発生し、フレミングの左手の法則により回転する力が発生するためです。 

https://hegtel.com/arago.htmlより拝借

実験8 ピンク色のプラスチックの板と銅板(どちらも磁石にくっつかない)を重ねて斜面を作っています。磁石を滑らせると、プラスチック板の方ではスーッと滑り落ちるのに対して、銅板の方ではゆっくりと滑落します。これも銅板の方では上と同じように渦電流が発生して滑り落ちるのに抵抗するような力が発生するためです。ここのサイトが参考になります。

上では先に解説してしまっていますが、当日はどうしてこのような現象が起きるのか、その理由を考えてもらい、渦電流と誘導電動機の原理について解説しました。実験7では磁石を手で回していますが、磁界が回転すればいいんですよね。ここが誘導電動機への道の重要なところです。
これらに関連して、原理の発見と実用化に至る過程、科学と技術・工学の関係について解説しました。科学と技術、理学と工学の役割分担、協力関係を考えてみましょう。科学技術ではなく、科学と技術なのですよね。

磁石と電気の歴史をお話しするつもりでしたが、とても時間がなく、割愛しましたが、ここに載せておきます。

〇人間にショックを与える魚:紀元前2700年頃には古代エジプトで知られていた?
〇磁石の発見:紀元前1,000年以前からギリシャで知られていた。プラトン(ギリシャ、紀元前400年頃) 磁石について書き記している
〇摩擦電気の発見;紀元前600年頃 タレス(ギリシャ)
〇方位磁石(指南魚):11世紀頃、中国で磁石にN極・S極があることを発見 
〇雷の正体:1752年、ベンジャミン・フランクリン(アメリカ、1705~1790)
〇電池の発明;1800年、アレツサンドロ・ヴォルタ(イタリア、1745~1827)
〇電流の磁気作用:1820年、ハンス・クリスチャン・エルステッド(デンマーク、1777~1851)
〇電磁誘導の発見:1831年、マイケル・ファラデー(イギリス、1791~1867)
〇電磁気学の完成:1864年、J.C.マクスウェル(イギリス、1831~1879)
〇最初の実用的モーター:1834年、トーマス・ダベンポート(アメリカ、1802~1851)
〇最初の誘導電動機:1887年、ニコラ・テスラ(クロアチア、1856~1943)1885年、ガリレオ・フェラリス(イタリア、1847~1897)
  ⇒産業、家庭生活の電化
〇トランジスタ:1947年、J.バーディーン(1908~1991)、W,ブラッテン(1902~1989)
  ⇒ディジタル、コンピューターの時代