私立聖徳学園小学校での活動

大井みさほ会員が、2月19日の午後、私立聖徳学園小学校で、「光とは何か」というテーマで、講義、演示実験、実験を含む特別授業を行いました。参加した児童は、5,6年生の理科希望者28名、理科教員が2名でした。この理化特別授業は、1年おきに実施してきていますが、毎回、少しずつ、内容は変わってきています。

先方の依頼により、レーザーについての話を長くしました。また、光が水中に入るときの屈折の説明を詳しくしました。

実験台にレーザーポインターと水槽を用意し、レーザー光を使って水槽内の水の中を通る光路および、反射、屈折の観察と実験を行ないました。

レーザー光が、透明なアクリル棒中を全反射して進む様子を演示実験で見せ、光ファイバーの中を通る様子も示しました。

回折格子片を配り、各自が工作用紙で簡易分光器をつくり、蛍光灯のスペクトルの観察を行いました。初めからやると時間がかかるので、工作用紙にはあらかじめ図面を描いておいてもらい、それを配布しました。2人の理科教員が実験を手伝ってくれたので、比較的スムースに工作することができました。

実験終了後に、学習したことのまとめを各児童に書いてもらって回収し、後から送ってくるとのこと、どんなことが書かれているか、楽しみです。

熱海ホテルニューアカオでの活動

和田勝会員が、熱海のホテルニューアカオで開催された東京ゴム薬品商同業会総会の後に、総会参加者向けに行われた講演会で、「ウグイスのお尻を追いかけて -マッチョであるのも結構、大変ー」というタイトルで、多数のスライドを使って講演しました。参加者は同会理事長をはじめ25名でした。

わかりやすく、なおかつおもしろく話してほしいと依頼されたので、40年、鳥の内分泌学の研究を行ってきたと自己紹介をした後、日本画に描かれた鳥の絵を示して、鳥の骨格から見て、脚の描き方はこれではおかしいので、とても気になります、というところから話を始めました。
上の左の絵、脚の描き方が気になります。鳥の骨格は次の図のようになっています。
この鳥の場合、大腿骨と膝は腹部の羽毛の中に隠れています。したがって、勝手に手を入れて直した右の図のように、かかとにあたる部分が後ろ側にあって、そこから跗蹠骨が前に伸びているはずです。ちなみに跗蹠骨はヒトの中足骨にあたり、ヒトでは複数あるけれど鳥類では融合して一本です。つまり、トリはつま先立ちで歩いているのです。でもこんな話から始めたら、わかりやすく、おもしろく、ではなくて、理屈っぽいって印象を与えたかも。

ちょうど当日は2月14日のバレンタインデーでした。この日がなんでチョコレートを贈る日になったかはともかく、昔から植物が芽吹き、鳥が囀り始める日とバレンタインの殉教と結びついて人々が祝うようになりました。冬至からほぼ2か月、日の長さが長くなったと感じ始めるころなのです。でもって生物季節の一つである、ウグイスの初鳴き日がちょうどこのころにあたります(地域によって異なりますが九州ではそうです。東京ではもう少し遅いかも)。

これをきっかけに、ウグイスの紹介。日本人は誰でも知っている鳥ですが、意外と研究されていないのです。それでウズラで培った知識や技術で、ウグイスの繁殖生理学の解明に乗り出したのです(ちょっと大げさ)。

ウグイスを使った研究成果のお話に入る前に、鳥についての一般的なこと、体を軽くして飛ぶためにどのような進化をしたのかと、繁殖の内分泌学のお話をしました(この辺りはこちらのページを見てね、まだ未完成だけど)。

野生の鳥であるウグイスの研究をしようとすると、捕獲しなければなりません。捕獲するためには環境省が発行する鳥獣捕獲許可証が必要です。許可証を取得するためには、委託を受けた山科鳥類研究所が行っている講習会に参加して、見極めテストに合格する必要があります。実習は新潟県福島潟にある観測ステーションで行われるので、何とかスケジュールを調整して参加しました。泊まり込みです。こうして捕獲許可証を取得してバンダーに一応なって、金属製の番号の入った足環をつけられるようになりました。プラスチック製の色足輪も購入しました。

ウグイスの紹介をした時に話したことですが、古くからおこなわれていたウグイスの飼養は、江戸時代にはとくに盛んになり、鳴き合わせが行われました。早く鳴き始めさせるために、蝋燭で昼の長さを長くする「夜飼い」が行われていました。そこで、霞ヶ浦で捕獲したウグイスを使って、夜飼いを行ってみました。
短日(8L16D)から長日(16L8D)に移して7日目になると囀り始め、血中テストステロン濃度も10倍近くに跳ね上がっていました。

さて、ここからがフィールドでの研究です。繁殖期になるべく多数のウグイスを捕獲しなければならないので、場所の選定が重要です。いろいろと情報を聞いて、東京大学付属秩父演習林をフィールドとすることに決めました。講義の合間を縫って、勤務地の千葉県市川市から、器材と学生を乗せた車を駆って、関越自動車道を花園インターまで走り、国道140号を西へ、秩父市を抜けて川俣にある東大の自炊宿舎まで走ります。2泊3日の日程で、これをほぼ毎週繰り返しました。

鳥類では多くの種に羽装の性的二型が見られますが、ウグイスの場合は羽装は雌雄で同じです。違いは体重で、オスはメスのほぼ二倍の体重があります。
演習林栃本地区の入川の沿って進んだ矢竹沢近辺での観察によると、オスは縄張りを構えて3月末から8月末まで囀り続け、複数のメスを縄張りに誘い、営巣、産卵、子育てをすべてメスに任せている一雄多雌の繁殖連略を取っていることが明らかになりました。

ここからはカスミ網を使った捕獲です。カスミ網を張って、録音した他個体の囀りを網の近くで再生すると、縄張り保有オスは興奮して盛んに囀り、場合によってはカスミ網に突進してかかってしまいます。かかったら網から外し、翼静脈を穿刺して、出血した静脈血をヘマトクリット管で吸い取ります。採決した後、ウイスの体重、翼長、跗蹠長を測定し、話してやります。たいてい、ウグイスはすぐに自分の縄張りに戻ります。ヘマトクリット管は宿舎に帰った後、遠心して上澄みをハミルトン注射器で吸い出して遠心チューブにとりわけ、研究室に持ち帰ってラジオイムノアッセイ法でテストステロンとコルチコステロンを測定します。

囀りを聞かせ始めてから30分の間(網にかかった場合はそれまでの間)に、囀りを聞かせ始めてから(プレイバック法)何分で囀り返したか、囀りと谷渡りの数は何回だったか数えます。結果の一部は以下の通りです。このグラフはさえずりの結果です。

雄性ホルモンであるテストステロンの血中濃度は、この間ずっと高いままでした。

詳しい結果は、小生の自前のページの研究タブー>ウグイスの項の原著論文をご覧ください。

これらの結果は、一雄一雌の繁殖戦略をとる鳴禽類の結果とは異なっています。一雄一雌の種では、メスが産卵し抱卵に入るころになると、オスは囀りを止め、餌を運んで子育てに参加します。これに対してウグイスは、マッチョをずっと維持するんですね。

ここまではプレイバック法で捕獲したので、縄張り保有オスだけを捕獲してデータを得ている可能性が高いので、プレイバックせずにカスミ網にかかるのを待って、うまく網にかかった個体から採血することにしました(パッシブネッティング)。縄張り保有オスかそうでないあぶれオス(フローター)かを確認するために、対象場所を狭めて、そこに縄張りを構えているオスを確定して、捕獲することにします。しかしこれは、言うは易しでも行うは難しです。ともかく時間がかかるのです。

こうして、なわばりを確定して精査すると、なわばり保有オスとあぶれオスの間で、体重、跗蹠長などの体格、血中テストステロンとコルチコステロンに差がありませんでした。今これを書いていて気が付いたのですが、この結果は論文にしてませんでした。ネガティブデータだから書きにくかったと感じたのでしょう(当時は)。でも、おもしろい結果が出ているので、今書いていて、論文にしておいた方がいいと感じました。たとえば捕獲法の違いによって、血中テストステロン濃度が異なります。
血中コルチコステロン濃度の方があまり差がみられません。ところがオスとメスでは、血中コルチコステロン濃度がかなり異なります。

さらに、適当なプライマーを決定して、マイクロサテライト法で親子判定をしました。
その結果、あぶれオスも子供を残している可能性が示唆されました。この結果は詰めが甘いのですが、可能性はかなり高いと思っています。

ウグイスは、どうしてこのような繁殖戦略をとっているのでしょうか。子孫をなるべく残すためには、オスから見たら

1)つがいを維持してメスをガードし、育雛にも参加して確実に雛を育てる
2)なるべく多くのメスを獲得し、多くの雛を残す努力をする

の二つの戦略があります。笹薮に適応したウグイスは、競争者がいないのでその豊富な資源を独占することができたのですが、ヘビなどによる高い捕食圧、カッコーによる托卵などのために、繁殖の失敗が多くみられるようです。したがって、2の戦略を取った方が有利だったのでしょう。そのために内分泌機構も、この繁殖戦略を支えるように進化したと考えられます。

生物の基本原則である進化は、身体的な特徴である形質だけでなく、繁殖戦略にも当てはまり、環境に適応してそれぞれの繁殖戦略が進化しているが、それを可能にしているのがホルモンによる生理学的な機構であることを強調しました。

講演が終わった後、鳥全般のものも含めて、たくさんの質問を受けました。

高尾山学園での活動(6)

奥田治之会員が、2月13日の午後、八王子市立高尾山学園で、「日時計の話」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は4名、教員が3名でした。

初めに、日時計の原理(下記参照)を簡単に説明し、大昔から、季節の移り変わりや時間の変化を知るために利用されてきたこと、また、古今東西の様々な日時計の写真を見せて紹介しました。
  ロンドンKew Palace
  http://www.canadaclockmuseum.ca より
  スペイン・セビリア地方のMudejar門のもの  日大文理学部世田谷キャンパス内
http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/takaralarge28.htmより

日本の主な日時がある地図

そして、原理を理解すれば、だれでも、簡単に日時計が作れることを説明したのち、紙細工の日時計の型紙を渡して、生徒自ら作ってもらいました。

棒を立てれば影ができ、この影は太陽の動きに従って移動するので、そこから時刻を推定することができます。子供の頃、よくやりましたね。でもそれでは正確ではありません。上の写真にあるように、建てた棒(三角形ですが)の角度がキモです(ロンドンと世田谷の違)。キモは棒の傾きです。この角度はその地方の緯度になります。今回使った型紙には、これらの点を解決して、印刷してあります。

日時計のつくり方のページ(キャノンサイエンスラボ・キッズ)

幸い、当日は天気が良かったので、出来上がった日時計を使ってちゃんと時刻が読み取れることを体験してもらいました。簡単な道具でありながら、かなり正確な時刻が読み取れることにみんな感心していました。

このような観察をしながら、日時計を正しく使うためには、軸を真北に向けることが大切なこと、(地球の自転軸と、地磁気の軸がずれているため、磁石の示す北は正確でなく、東京付近では6度西に振れていること)、また、日本の標準時は東経135度(明石)が基準になっているので、経度が異なるときには、その補正をしなければならないこと(たとえば東京は明石から東へ5度離れているので、日時計の時刻から20分を引きます)、また、季節によって遅れ進みのあることなどを説明しました。

全体的に、原理をどこまで理解してもらったかは、よくわかりませんでしたが、ものづくりには熱心に取り組み、楽しんでもらえたと思いました。先生方にも、興味を持って聞いていただけたと思います。

日時計は、地球の自転と公転、緯度と経度などを深く学ぶ絶好のトピックだと思います。

日時計の原理の説明
英語版Wikipediaも詳しい

日時計の型紙制作ソフト(窓の杜)

八王子市立高尾山学園での活動(5)

和田勝会員が、1月30日の午後、八王子市立高尾山学園で、「細胞のお話」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は2名、教員が3名でした。

まず最初に、月探査船かぐやから撮影した、月平線の向こうを漆黒の宇宙空間をバックに青い地球が登ってくるJAXAとNHKが制作した動画を見せました。

続いてルイアームストロングが歌う「What a wonderful World」の動画を見せました。歌詞が英語なので、拙訳を印刷して渡しました。What a Wonderful World和訳2

この2つの動画を見ると、この広い宇宙空間に、生命体が存在するのは、太陽系第三惑星地球だけであることが強く印象付けられます。後者の動画では、多様な生物が地球上に生息している姿が生き生きと映し出されます。

その生き物ですが、大きなものは20mを越えるシロナガスクジラから小さなものは0.2mmのゾウリムシと、じつにバラエティーに富んでいます。
Blue whale size.svg
Wikipediaより

上の図では、ゾウリムシはヒトの足先の点にも満たない大きさです。大きな生物なら肉眼で見ることができますが、小さなゾウリムシは拡大する装置が必要です。それで、顕微鏡の登場です。

生徒は備え付けの顕微鏡を準備して、持参したゾウリムシをシャーレに配ります。ホールスライドグラスを使い、自由に観察してスケッチしてもらいました。

ゾウリムシといっても平たいわけではない。どんな形をしているのか、どのようにして泳ぐのかをじっくりと観察してもらいました。楽しんで観察していましたが、先生方の方が楽しんでいたかもしれません。回転しながら進む様子、何かにぶつかると反転して障害物を回避する動き、などとても興味深いものがあります。高倍率にして細胞の縁をよく見ると、繊毛がチラチラと動いているのが見えます。分裂をしようとしているゾウリムシを観察することができました。ラッキー。

下の動画は高校生物実験ですが参考に載せておきます(著作権は矢嶋正博さんにあります)。

これは単細胞生物、たった1個の細胞で何でもこなしてしまう。でも大きさは限られてしまいます。クジラの大きさの単細胞生物はいません。表面積と体積の比率が釣り合わなくなるからです。そのため、細胞1個の大きさはせいぜい0.02mmです。

でもって細胞は、細胞分裂によって数を増やし、役割分担をして体を構成するようになります。多細胞生物の誕生です。多細胞生物の例として、一番観察がしやすいタマネギの鱗茎葉の上皮細胞を薄く剥ぎ、酢酸カーミンで染色して観察してもらいました。

最後に、超音波によるヒトの発生の動画を見てもらいました。みんなは生まれる前、お母さんのお腹の中で、細胞の数を増やして大きくなって生まれてきたんだよ。すごいね!

八王子市立高尾山学園での活動(4)

廣田穣会員が、1月16日の午後、八王子市立高尾山学園で、「色のついたものと光を発するもの」というテーマで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は4名、教員が3名でした。

事前の打ち合わせはメールで行い、20枚のスライドの原稿を学園側に送ってカラーコピーしてもらい、配布しました。当日は配布したコピーを見てもらいながら、スライドを映写して説明を行いました。

最初の30分ほどを使って、青い色の色紙、セロファン紙、青い液体のように青く見えるものと、青色LED、青色信号灯など、青い色を出すものを見せて、青色といっても、反射によるもの、透過によるもの、青い光を放射するものは、それぞれ異なる原理によって見えていることを理解してもらいました。

難しく言うと、光源色と物体色、さらに後者には表面色と透過色があるということです。

CCS株式会社光と色の話 第一部12回より

これを踏まえて、木の葉がなぜ緑色であるかを理解してもらい、補色の考えを紹介しました。

発光による色として、熱、紫外線、化学発光について説明をし、発光の例として炎色反応の実験を行いました。スチールウール上に、比較的多い量の金属塩を保持する新しい方法を採用することにより、強い炎色反応を得ることができました。