立教池袋中学校・高等学校での活動

小林憲正、町田武生、和田勝会員が、7月22日午後に教池袋中学校・高等学校で開かれた科学部の2023年度研究発表会に参加して、生徒の発表を聞き、コメント等を述べました。久しぶりの対面での研究発表会でした。発表する生徒のほか、その父兄10人と、立教大学理学部化学科の和田 亨教授が参加されていました。

演題は中学生から4題、高校生から5題あり、途中1回の休憩をはさんでほぼ予定通りに進行し、午後3時15分に閉会式が行われました。例年に比べると演題数が少ない印象でした。いずれの演題もパワーポイントを使って発表され、7分の発表時間の後に3分の質疑応答が行われました。プログラムは次の通りです。

発表された9件は全て化学分野の内容でしが、それぞれ、それなりのテーマに取り組んでいることがうかがえました。質疑応答の時間には、小林会員、町田会員、それと立教大学の和田教授がコメントを述べました。

何のために何をするのか、その結果はどんな意味があるのかを、もう少し考えて実験すれば、さらに良い研究成果が出そうなものもあり、期待が持てると思われました。この発表会は中間発表であり、これからさらに研究を進めるということでしたが、今回の発表に対して出されたコメント等を参考にして、されにブラッシュアップされることを期待したいと思います。実験の早い段階から、SSISSなり然るべき専門家の助言を得るようにすれば、格段にレベルが上がりそうにも見えました。口頭発表以外に3件の要旨が加えられていて、活発な部活動の様子が窺われました。

東村山第三中学校での活動(3)

7月18日に町田武生会員が東村山第三中学校で自然探求部の活動を支援して実験授業を行いました。1年生から3年生までの部員35名が参加し、教員も5名、参加しました。

自然探究部での実験研究の進め方を考える一環として、老化研究とはどんなものかを知りたいとの依頼があり、ヒトの体が細胞から成り立っていること、それら細胞に分裂能力の限界、つまり寿命があることがこの分野の研究の基本であることを述べました。

培養下でガン細胞の増殖に限界はないが、正常の細胞には分裂の回数に限りがあることを見出した研究を紹介し、体を構成するさまざまな細胞を、小腸、大腸、肝臓、すい臓、腎臓、甲状腺、脳下垂体、精巣、卵巣、大脳などの組織標本を持参して、顕微鏡で観察してもらいました。下の写真はラット小腸の光学顕微鏡写真(ヘマトキシリン・エオシン染色)で、ここからお借りしています。

からだを構成する細胞の分裂回数には、染色体の末端にあるテロメアという部分が、カウンター時計のような働きをして回数を規定していて、細胞の寿命を決めているという考えがあります。一方で、細胞の中には、筋肉や神経細胞、脂肪細胞などのように、成長の段階で分裂増殖を終えてしまい、その後は個体の死までずっと活動するものがあり、これらの細胞では細胞の活動によって必然的に起こる酸化などの物理化学的な反応そのものによって寿命が規定されているとの考えを紹介しました。 下の図はここからお借りしています。

老化研究をはじめとして、さまざまな実験研究では、筋道を立てて研究に取り組むとともに、ものの見方や視点を変えることにより新展開が開けること、偶然の気づきや誤操作により新発見が得られることなどの事例を紹介し、とにかく何かやってみることから始めようと促しました。

部活動は授業の指導案などに規定されない自由な実験研究活動なので、気楽に楽しく身近な疑問や気付きを解決することから始めてみようと勧めました。当該校は教諭・校長とも科学部活動に非常に意欲的なので、われわれとしてはごく簡単な実験観察を生徒と一緒に行うのが良い手掛かりになりそうに思いました。

千葉市立あやめ台小学校での活動

和田勝会員が、地元の千葉市立あやめ台小学校で、夏休み前の2日間7月12日と13日を使って特別授業の枠をもうけてもらい、5年生2クラスと6年生1クラスの児童に対して、「生きものは細胞からできている」というタイトルで実験授業を行いました。2時限続き、途中休みなしの90分で行いました。ともかく、おもしろいな、理科って楽しいなと、感じてもらえるような授業を目指しました。

虫メガネ、実体顕微鏡、光学顕微鏡を用意してもらい、ゾウリムシを、肉眼、虫メガネ、実体顕微鏡で観察し、最後に顕微鏡で観察しました。肉眼では点にしか見えないゾウリムシが、虫メガネでは細長いものが動いているとわかり、実態顕微鏡では、もう少し大きく見えて活発に動いているのがわかります。

顕微鏡の操作法の説明を行い、持参したプレパラートを使って操作に慣れてもらい、ホールスライドガラスにメチルセルローズ溶液をたらし、そこへゾウリムシの入った水を一滴たらして観察しました。ゾウリムシがどのように動くか観察するよう促し、回転して動いていることを確認してもらいました。どうして回転して前に進むかを考えてもらい、最後に繊毛で泳ぐことを説明しました。繊毛というとなじみがないかもしれないが、ヒトにも気管上皮に繊毛があることを述べ、この繊毛の働きで、痰を出して吸い込んだ異物を輩出しいるのだと説明しました。

その後、多細胞生物の植物の例として、タマネギ鱗茎葉の表皮細胞をそのままと酢酸カーミンで染色したものを観察してもらいました。先の細いピンセットがなく、太いものを使ったので、表皮だけを切り出すのが難しく、厚い切片がが多かったのですが、周辺の薄いところを探してもらい観察してもらいました。染色により1つ1つの細胞に核がきれいに見えました。

動物細胞の例として。自分の頬の内側の表皮細胞を綿棒でこすり取り、染色して観察しましたが、すべての人がうまく観察することはできませんでした。綿棒によるこすり取りが十分でなかったためだと思われます。

最後に、植物細胞と動物細胞の違いを説明し、細胞は細胞分裂により数を増やし、成長することを強調しました。

児童はみな熱心で、反応も良かったと思います。後で感想文をいただきましたが、こんな文章が図とともに書かれていました。3つだけを載せておきます。(いずれも原文のまま)

「和田先生に顕微鏡の使い方を教わって、ゾウリムシとたまねぎのうすい皮、自分の細胞を見て、理科の楽しさをしりました。細胞がはっきりと良く見えて『こんな細胞があるんだぁ』と思いました。液であかくそめると皮はバッタのたまごみたいな形をしていて一つ一つに核がありました。和田先生に理科の実験をおそわったのでこれから楽しい理科にしていきます。」(5年生)

「和田先生きのうは分かりやすい理科の授業をしてくれてありがとうございました。私は動物や虫すべての生き物が触れなくて大丈夫かなととても心配でしたけれどじゅ業が始まり和田先生が優しく丁ねいに説明してくれて『あぁこうやってやるんだ。私でもできるかも。』という気持ちになれて不安な気持ちがどこかに行ってしまいました。私は理科はあまり好きではなかったけれど和田先生のおかげで理科がもっと好きになれました。」(5年生)

「理科授業を行っていただきありがとうございました。ふだんはできないとても貴重な体験なのでとても楽しかったです。ゾウリムシを見たりたまねぎの細胞を見たりすることができてとても興味深かったです。残念ながら自分の細胞を見ることはできませんでしたが、また機会があれば挑戦したいと思います。前から理科は好きでしたが、この授業で、もっと好きになれました。ありがとうございました。」(6年生)

東村山第三中学校での活動(2)

3月23日の午後2時から3時45分に、佐々田博之会員が東村山第三中学校自然探求部の活動で1、2年生24名に対して、事前にもらった質問「レーザー光と普通の光の違い」に関して講義と実験授業を行いました。

「レーザー光と普通の光の違い」に答えるために、Power Point 30枚を使い、1時間かけて、波の特性、光が回折しないように見えるのはなぜか、レーザー光は普通の光より完璧な波に近いため細いビームとなることを説明しました。


レーザ(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)は、普通の白色光と違い、指向性(拡散せず広がらない)、単色性(波長が一定でそろっている)、可干渉性(位相がそろっている)といった特徴を持ちます(下の図はここからお借りしています)。

レーザー光は、単色の細いビームとして伝わり、壁などに当たるとギラギラ光るのでとても見やすく、ポインターとして最適です。また、CD-ROMへの書き込み、読み出しにも使われています。

波というのは、水や空気などの媒質の変化が、時々刻々、隣接する媒質に伝わっていく現象です。水面の高さの変化は水面派であり、空気の圧力の変化は音波、電磁場の変化は電磁波になります。電波、赤外線、可視光線、紫外線、X戦、ガンマ線は、いずれも波長の異なる電磁波です。

波には回折という現象が生じます。波が隔壁に空いた小さな穴を通ると、穴を通った波は隔壁の背後に回り込む現象です。下の写真は隔壁に空いた2つの隙間から水面波が隙間を通った後広がる様子を示しています。

光も波ですから、回折が起こるはずです。光は水面波に比べると波長がずっと短いので、上の例のように簡単には観察できません(下の図はここからお借りしています)。

手のひらを光源に向けて、指と指の間を狭めていってみてください。あるところで指と指の間の隙間に黒い線が表れると思います。これが回折によって生じた現象です。短い波長の波に回折を生じさせるためには、細かいスリットを施した回折格子を使います(下のものは一例で、10mmあたり2000本のスリットが刻まれています)。

このような話をした後に、1時間弱でLED(赤、緑、青)とレーザーポインター(赤、緑、青)を光源にして、紙での散乱(レーザーではスペックルが見える)、ハンカチでの散乱(レーザーでは干渉縞が見える)、回折格子シートでの回折(レーザー光はLED光より高次の回折まで見える)を観察しました。また、波長(赤、緑、青)による回折角の違いを調べました。与えられた質問が高度なので、全てを完全に理解することは難しかったかもしれませんが、レーザー光と普通の光の違いは体験できたようです。

千葉県SSH発表会

3月18日に、町田武生会員と和田勝会員が、千葉工業大学津田沼キャンパスでで行われた千葉県高等学校課題研究発表会に参加して、助言活動を行いました。

これは、千葉サイエンススクールネットとコンソーシアム千葉主催による千葉県SSH指定校と理数科を設置している高等学校12校の生徒による課題研究発表会で、指導・助言者として上記2名が参加しました。我々以外に、県内外の大学から多数の指導助言者が参加していました。入り口で渡された「令和4年度千葉県高等学校課題研究会ポスター集」は242ページもある立派な冊子でした。

午前中に口頭発で、物理10、化学13,生物13,地学6,数学8件の発表があり、指定された生物会場2での割り振られた生物4課題の発表に対して指導・助言を行いました。

午後はポスター発表があり、物理65,化学55、生物64、地学19、数学29、合計232件の発表がありました。生物64課題は前半と後半に分かれてポスター前での説明があり、我々は生物の2会場を回って、説明係の説明を聞き、コメントをしました。

生物64課題中、それぞれ指定された7課題についてはオンラインで講評を送信し、また、主だった発表にもコメントを送り、既にメールでいくつかのやりとりが行われ、支援の実が結んでいるようでした。 生物の発表しか見ていないのですが、いずれの発表も熱心に取り組んでいる様子がうかがえました。ただポスターに載せられたグラフの表示方法など、改善が必要だと思われるものもありました。

南相馬サイエンスラボ主催地域教育を考える勉強会での活動

2月13日に、町田武生会員がNPO法人南相馬サイエンスラボ(齋藤実理事長)主催、みどりアートパーク(横浜市緑区)共催の、福島県地域支援事業としての「第6回地域教育を考える勉強会」において、ゲスト講師を招いて「幸せをつくる教育」について行われた講演と討論で、全体の取り纏め支援と総括を行いました。

南相馬サイエンスラボでは、齋藤実氏が児童生徒に科学的なものの見方、考え方を身に付けさせるように取り組んでいて、生徒が見つけた疑問や課題を解決して次の展開を図るときに、学校だけでなく地域が支援する仕組みの構築に努力しているので、これに関連した事業の紹介がなされました。

 川崎市教育委員会佐藤映子指導主事は、川崎市の「寺子屋事業」の紹介と成果を紹介、地域の人々の力の大きさを述べました。

 福島県只見町のNPO法人ただみコミュニティクラブの平山真恵美マネージャーは、幼少年を地域で育てる取り組みを紹介しました。

 南相馬市教育委員会牛来学社会教育主事が、地域学校協働活動事業の立ち上げと推進を紹介しました。この事業の中で、養蜂の分野でさまざまな賞を得ているはちみつマイスターの米田望女史の指導で、児童をミツバチに馴染ませ、養蜂の体験を進めている例が示されました。

 バングラデシュのFuture Design Schoolのモラ・M・マスド校長は、南相馬サイエンスラボの取組を参考にして母国にも同様の事業を立ち上げたい意向を述べました。

 最後にピアノと歌の新屋賀子楽団による「いのちと地球」の演奏があり、生命のあり方を問う内容が披露されました。

 児童生徒が自ら生きる姿勢を育むために地域の役割が重要であることを確認する会でした。齋藤実氏は児童生徒に平易にものごとを説明する能力に長け、小学生向けデモ実験や実演が見事で、この日も「血液って何だろう?」の実演がありました。町田会員から、SSISSのさまざまな取組を紹介しましたが、あらためてSSISSも地域教育へのコミットを考える必要があると認識させられました。学校では、教員の負担軽減のために部活動を廃止する方向のため、まずは部活動を地域人材に委ねる方策が有効と考えられると感じました。