狛江市和泉小学校での活動

山崎謙介会員が、10月27日に狛江市立和泉小学校の6年生3クラスおよそ100名の児童に対して、「地震の起こり方ー地震発生のモデルと地震の規模を測る物差しー」というテーマで授業を行いました(以下の記述は当日のお話に、補足的な解説を加えています)。
20161027-110月21日に鳥取地震が起こっています。4月には熊本地震があり、5年前には東北地方太平洋沖地震がありました。鳥取地震は解析が間に合わなかったけれど、熊本地震と東北地方太平洋沖地震を例に、地震について考えてみましょう。

熊本地震の新聞記事です。この時は大きな地震が1日の間をおいて2回、発生しました。本震だとか余震だとか前震だとかの言葉が使われ、最初は混乱しました。ともあれ、地震が発生した時には必ず、震度、マグニチュード、震源の位置と深さが発表されます。
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それでは新聞記事にある、震度って何でしょう、マグニチュードって何でしょう。6年生になると新聞を見ることがあると思いますが、記事を読んで「?」と思ったら調べてみましょうね。今日は震度とかマグニチュードとは何か、から始まって、「そもそも地震ってどんなことで、どうして起こるの?」とか、「地下では何が起こっているの?」ということを考えてみましょう。
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新聞にはすぐに気象庁から各地の震度が発表されます。昔は人が感じた揺れの大きさや周囲の状況から震度を決めていましたが、現在では(平成8年4月以降)各地に置かれた計測震度計によって自動的に観測しています(実際はそこから計測震度を算出して表示できる地震計が使われています)。熊本地震の時の九州各地の震度はこんな風でした。
20161027-4みんなに配った気象庁発行の「震度とゆれの状況」のポスターを見てください。現在では震度5と6に弱と強があるので、震度は0から7まで10階級に分けられています。このポスターを家のどこかに貼っておいて、地震が来たら震度を推定してみるといいですね。

科学ではいろいろなことを計測(観察して数値化)することが重要な第一歩になります。地震の場合は、計測する項目の一つが震度なのです。

それではどうやって震度を計測するのでしょうか。震度は地面の動きです。これには変位(どの程度動いたか)、速度(どのぐらいの速さでか)、それと加速度(速度の変化はどのくらいか)がありますが、人が敏感に感じるのは加速度です。たとえば、電車に乗った場合、駅から発車するときと駅に停車するときは、体がスピードの変化を感じることができますが、駅の間で一定の速度になるとあまり動いているとは感じられなります。つまり人は加速度を敏感に感じているのです。

この加速度を測るのが計測震度計で、原理は振子運動にあります。これは振り子ですね。こうやって錘を動かしてやると左右に振れます。一方、錘を一番下の位置で止めて、持つ手を素早く動かすと錘は振れません。錘は停止した状態で周囲が動くことになります。したがって、この周囲の動きを記録してやればよいのです。
20161027-5次の図は、この地震計の原理を図にしたものです。
fig9_1図はここから引用。原理についてもう少し詳しく書かれている。

加速度の単位はガルで、速度が1秒間で1cm速くなるのを1ガルとしています。このガルはガリレオ・ガリレイから来ています。現在の計測震度計では記録は紙に描くのでなく、コイルを使って電流に変えて記録しています。また上の図のような一方向ではなく、東西方向、南北方向それと上下方向の三成分を記録しています。
20161027-6上の図は、熊本地震の本震(4月16日)の時の、上から南北、東西、上下方向の加速度の記録です(地中と地表が3本ずつ)。

こうして求めた三方向の波形から計算によって計測震度を求め、震度階級に置き換えています(詳しくはここをご覧ください)。

計測震度は、その場所での観測値なので、震源からの距離(あるいはその場所の地盤などの状況)によって異なってきます。次の2枚の図は、東北地方太平洋沖地震の時の東京(上、震度5)と宮城県(下、震度7)での三方向の加速度の記録です(縦軸のスケールは異なり、下の方が13倍ほどは大きい)。
20161027-720161027-8上の図でわかるように、震源に近い宮城では2つのピークがあるのに対して、東京では1つに融合して長い時間経過をたどっています。これは揺れが伝わってくるために起こることです。東京では震度5の揺れが長く続き、怖かったですねー。みんなはその時幼稚園生だったかな、怖かったでしょう、と当時の記憶と地震の記録を結びつけるようにします。

それでは地震はどうして起こるのでしょうか。昔は地下でナマズが暴れるので起こるなどと考えられていましたが、現在では地中で起こった断層運動によって生まれたエネルギーが、周囲に放出されるためだと考えられています。
20161027-9熊本地震も東北地方太平洋沖地震も最大震度は7ですが、震度の分布をみると後者の方がずっと広がっていて、規模の大きさをうかがわせます。ここで地震の規模を測る物差しとして、マグニチュードが登場します。地震の本態は断層運動ですから、断層面の大きさ(面積)と断層面が滑った大きさがわかれば、地震の震源での規模を測る物差しになります。

しかしながら、断層面の面積などを実測することはできないので、観測された地震波などをもとに計算して求めます。そのためマグニチュードには多くの種類があります。日本で主に使われているのは、気象庁マグニチュードとモーメントマグニチュードです(両者の違いについてはここに詳しく解説されています。ただし一番最後の引用されているWebPageはリンクが切れています)。

詳しいことは省略して大ざっぱに言うと、マグニチュードは対数なので(10∧1.5M)、マグニチュードが1大きくなると、エネルギーはおよそ31.6倍(10∧1.5)大きくなり、2では1000倍(10∧3)大きくなります。ちなみに熊本地震(本震)のマグニチュードは7.3、東北地方太平洋沖地震は9.0でした。これで地震の規模を数値化できることになりました。

気象庁が発表する地震情報には、震源の位置と深さがあります。これはどうやって計測しているのでしょうか。地震による弾性体である地面の揺れには2種類あります。一つは縦波(粗密波)で揺れの進行方向と同じ方向に振動するもの、もう一つは横波で進行方向と直角に振動するもので、前者をP波、後者をS波と呼びます(図はここより)。
jikazanimg2_2P波とS波では速度が違い、P波の方が速く進行します。そのためP波とS波の時間差を測ると距離が求められ、複数の観測地点の結果から震源の位置と深さを求めることができます。

こうして断層運動を起こした面積の大きさと「ずれ」の大きさが、地震の規模を決めていることが分かります。それではどうして断層運動が起こるのでしょうか。そこには地球の構造が大きくかかわっています。
20161027-10震源が比較的浅い地震の起こった場所を、世界地図の上に描いてみると、特徴的なパターンが見えてきます。
20161027-11これまでの研究で、地球の表面は何枚かのプレート(硬い岩盤)がジグソーパズルのようにはめ込まれてできていると考えられています。そうしてこのプレートは、ゆっくりと動いていて海溝で隣り合うプレートの下に沈み込んでいるのです。このような考えをプレートテクトニクスと呼んでいます。上の図の地震の起こった場所は海溝に沿っていることが分かります。

日本付近を拡大してみるとこのようになっていて、複数(4枚)のプレートが入り組んでいる位置に日本が存在していることが分かります。地震の多いのは仕方がないのですね。
20161027-12右上の赤が濃いところが千島海溝の位置、その下の縦に伸びた部分が日本海溝の位置です。右側の白い部分が太平洋プレートで、このプレートが日本海溝で沈み込んでいく部分の断面図が次の写真です。
20161027-13こうした動きによって断層運動が発生して、地震が起こるのです。地震の起こるメカニズムは気象庁のページに詳しく書かれています。

プレートは硬い岩盤の板だと書きましたが、この岩盤にはたくさんの割れ目があって、普段はしっかりとかみ合っています。この割れ目がプレートの動きによって押されてずれるのが断層運動です。このような「固着ーすべりー復元」は繰り返し起こります。これが活断層です。日本付近には、このような活断層が多数存在します。まだ見つかっていないものもあるようです。
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それでは地震予知はできるのでしょうか。繰り返し起こるのだから、周期がわかれば予知できそうですが、高い確率で予知するのは、なかなか難しいというのが実情です。

今日の話はちょっと難しかったかな。
20161027-15震度やマグニチュードの話をしましたが、科学にとって大事なことは観察・測定をすることです。地震の研究では、これらをいかに精度よく記録するか、科学者は知恵を絞ってきました。今でも改良が続けられています。地震を感じたら、震度やマグニチュードなど、今日のお話を思い出してください。

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