「活動記録」カテゴリーアーカイブ

私立聖徳学園小学校での活動

和田勝会員が、6月4日の午後、私立聖徳学園小学校で「細胞から生き物を見てみよう」というテーマで、児童が主体となって観察・実験を行う理科特別授業を行いました。参加した児童は、5,6年生のこの授業を希望するもの27名で、他に理科教員2名が参加しました。

今年度の理科特別授業を実施するにあたり、どのようなことが実施可能かという打ち合わせのために、すでに4月19日の夕方、先方の三輪教諭と打ち合わせをおこない、上記のテーマで2回、続けて行うことになっていました。6月4日はその第1回目です。

1回目はいろいろな細胞を見てみることに。まずは興味を持ってもらうために、単細胞のゾウリムシを観察してもらいました。
シャーレにゾウリムシのいる水を入れ、黒い紙の上において虫眼鏡で見てもらいます。
白い小さなものが、ぞわぞわと動いています。

続いて簡単に顕微鏡の使い方の説明をして、顕微鏡でもっと拡大して見てもらいます。

ゾウリムシは動いているのでおもしろく、皆は追いかけるのに一生懸命、ここまででだいぶ時間を使ってしまいました。

続いて植物のタマネギの鱗茎葉の表皮の細胞の観察です(定番ですね)。
カッターナイフを使って各自で切り出します。
スケッチを各自が自発的にしています。

最後に、口を漱いで頬の内側の上皮細胞を綿棒でこすり取り、スライドグラスに移して、酢酸カーミンで染色して見てもらいました。
全員ではなかったですが、ヒトの上皮細胞を見ることができました。

来週に向けて宿題を出しました。コップに水を満たし、その上にタマネギを載せ、根が生えてくるの様子を観察してくださいと。

6月11日に続きます。

 

八王子市立高尾山学園での活動

町田武生会員が5月22日の午後、八王子市立高尾山学園で、「生命は細胞にある」というタイトルで実験授業を行いました。参加した生徒は2名、教員は、中学理科教員と校長で計5名でした。

細胞の概容を説明した後、まずは細胞を顕微鏡で観察することから始めました。用意したゾウリムシおよびミドリムシを観察してスケッチしてもらいました。顕微鏡下で活発に動き回るゾウリムシとミドリムシを観察するのは興味深いようでした。
神戸大学洲崎ラボのページより宮城教育大学見上ラボのページより

次に、カナダモの葉片を使って、細胞が整然と整列している様子と葉緑体の存在を見てもらいました。さらに葉緑体が細胞内を移動する原形質流動を観察してもらいました。

今度は、ヒトのからだのつくりを考えることにしました。1個の受精卵から始まって、お母さんのおなかの中で発生が進み、最終的に細胞総数がおよそ37兆個のヒトのからだになります。そのうちおよそ26兆個は赤血球です。神経細胞は5千億個できますが、そのうち8割は死滅して、残るのは1千億個程度であることなどを説明しました。

細胞は集まって組織を作り、組織は器官を構成します。そこで、マウスの解剖図を配布して、体を構成する器官・臓器の説明を行いました。
池田博明氏のページより

用意した組織プレパラートで、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、甲状腺、大脳などの組織を顕微鏡で観察してもらいました。

これらを見ながら、体を構成する細胞には、生涯にわたって細胞分裂を続けるものがある一方、生後は細胞分裂をせずに、そのまま存続するものがあることも説明しました。

生徒は進んで観察し、楽しんでいるように見えました。4名の理科教員にいろいろと協力していただき、たいへん助かりました。

ところで、終了時刻に合わせて、理科室から火災が発生したとして、全校避難訓練が行われました。全員で火元の理科室から、ドタバタと校庭に避難する羽目に。校庭に集まった全校生徒は、小中合わせてせいぜい50<名程度で、教員などスタッフの姿ばかりが目に付く避難訓練ではありました。ちょっと余計ですが、印象的だったのでつい一言。

総会後の講演会

5月19日の総会終了後、午後3時から午後4時10分まで、和田勝会員による「ウグイスってなにもの? -その繁殖戦略とホルモンー」というタイトルの講演会が行われました。

総会後に公開の講演会を行うのは、今回が3回目です。そのため、ちょっと気張ってA4の色刷りチラシを外注で作成し、総会の案内に同封して会員に配布するとともに、いくつかの場所に配布しました。
でもって盛況だったかというと、そんなことはなくて、会員以外の聴衆は両手で数えられる数でした(残念!)。

講演の内容は予告に書いたように、名前はよく知っているけれど姿を見た人はあまりいないウグイスの繁殖戦略について、和田会員が協力をしてくれた学生さんとともに秩父の山の中で行った研究をもとにしたもので、このサイトの2018年2月のホテルニューアカオでの活動報告に載せているものを少し短くして話しました。内容に関してはそちらをご覧ください。

ウグイスのような野生の鳥を対象に、フィールドで生理学的な研究(内分泌学も含めて)を行うのは、ますます難しくなっているように思います。「役に立つ研究」を行うことが、大学のような研究機関にも強く求められ、研究資金も「役に立つ研究」に選択と集中という名のもとに注ぎ込まれ、ウグイスの繁殖戦略を明らかにするというような「役に立たない研究」には、回ってきにくくなっているように思えます。

本来、科学の研究というものは、研究者が観察を通じて持った不思議だな、なぜだろう、なぜを説明したいな、という素朴な情念を実現させるために行う営為が根本にあります。こう書くと、そんなものにお金を出せるか!と言われそうですが、多くの科学的成果は、このような基礎研究から生まれた種を引き継いだ応用研究から生まれました(研究にはもう一つ開発研究があります)。広い裾野の基礎研究があり、その上に応用研究、さらには開発研究が乗っかる形になることが望ましいのではないでしょうか。

これは講演会が終わった後、懇親会の会場に向かう道すがら話し合ったことを発展させて書いたものです。SSISSは、上に述べた情念を小学生、中学生、高校生が育てていくのを手助けしたいと思っています。

平成30年度の総会終了しました

5月19日(土)午後2時から2時45分まで、池袋立教中学校・高等学校地学教室で平成30年度の定例総会が開催され、無事終了しましたので、経過の報告をします。

野津憲治庶務担当理事の開会の宣言の後、出席者と委任状等提出者数から総会は成立しているという宣言があり、大井みさほ理事長から挨拶がありました。

続いて議長の選出が行われ、大井みさほ理事長が議長を務めることになり、以降は議長が議事進行をつかさどり、議事が進められました。

第1号議題(平成29年度事業報告及び収支決算報告)
議長の指名により、野津庶務担当理事から資料に基づいて平成29年度事業の報告がなされました。続いて和田会計担当理事より平成29年度活動計算書、貸借対照表、財産目録に則って収支決算の報告がありました。

この後、奥田監事より4月12日に東京大学理学部化学館会議室で行われた監査の報告がなされ、適切に管理されていることが報告されました。その後、審議の後、採決されて可決承認されました。

第2号議題(平成30年度事業計画及び収支予算案)
野津庶務担当理事から平成30年度の事業計画の説明があり、和田会計担当理事からは予算案について、前年度と比較しながら説明がなされました。相変わらず会員の高齢化と会員数の減少が続いているが、事業費(実際の活動)にかける金額を増やして、積極的に行こうとする予算案になっていることが説明されました。採決の結果、可決承認されました。

第3号議題(定款変更の件)
平成28年6月1日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し、同年6月7日に公布されました。この改正で、NPO法人は貸借対照表を公告することが義務付けられました。公告の方法は、1)官報に掲載、2)日刊新聞紙に掲載、3)電子公告、4)公衆の見やすいところに掲示、があります。

本法人はすでに、貸借対照表を含む事業報告を、このサイトに載せているので、理事会は3)を採用し、その旨を定款第54条に付記する案が提案され、採決の結果、可決承認されました。

予定されているすべての議案の審議が終了したので、自由な意見交換が行われました。5月12日に開催された「教科『理科』関連学会協議会シンポジウム」に出席した細矢会員から、新学習指導要領では「数理探求」がキーワードになるという発言があり、町田会員も意見を述べました。

最後に、議事録署名人の選出が諮られ、箕浦真生会員と有山正孝会員が選出されました。庶務理事が閉会を宣言して総会は無事、終了しました。

総会の議事録はここにあります。

総会終了後、午後3時から和田勝会員の講演会があり、さらにその後、懇親会が開かれました。

東京雑学大学での活動

和田勝会員が5月17日の午後2時から4時まで、西東京市民会館で行われた東京雑学大学1133回講義に出講し、「歴史にまつわる遺伝の話 -DNA、遺伝子をからめてー」というタイトルで講義を行いました。

東京雑学大学の聴講生は文系の方が多いようなので、その方たちの気を引くために、一番最初のスライドで夏樹静子著の「裁判百年史ものがたり」の本の表紙(単行本刊行当時のもの)を示しました。
2010年の刊行時に購入して読みましたが、推理小説作家の夏樹さんの筆によって12のエポックメイキングな裁判の記録が書かれていて、大変面白い本でした。その第1話に取り上げられているのが「大津事件」です。

「大津事件」は、後のロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世が、1891年(明治24年)に、まだ皇太子の時に日本を訪問した折、滋賀県大津市で警察官津田三蔵にサーベルで頭部を切りつけられるという事件です。高校の日本史では、司法権の独立を守った裁判ということで、習った記憶がある方もいると思います。

どうして「大津事件」を引き合いに出したかと言えば、このときの血染めのハンカチが、後にDNA鑑定に使われることになるからです(血液量の関係で、うまくいきませんでしたが)。

ニコライ2世一家7人は、1917年のロシア革命の後に拘束され、エカテリンブルグで1918年7月に惨殺され、遺体は棄損されて埋められます。
Wikipediaより

ソビエト連邦の崩壊後、遺体が発見され、1991年に皇帝・皇后を含む5人であることがDNA鑑定により確認されます。2007年に残りの2人(皇太子アレクセイとマリア皇女)が別の場所で発見され、こちらも間違いないことが確認されます。ここで講義では、親子鑑定を例にしてDNA鑑定について概略を話しました(ここでは省略)。

ロシア革命が起こり、革命が成功して一家が拘束され、その後に惨殺されたという悲劇は、なぜ起こったのでしょうか。もちろんいろいろな要因が絡み合っていますが、その一つに生物学的にみて、興味深い要因があります。

皇女が四人続き、五番目にやっと生まれた皇位継承者である男の子アレクセイが、血友病だったのです。これを気にした皇帝一家が宗教に走り、宮廷内で祈祷師ラスプーチンの暗躍を許し、ロシア革命の遠因になったといわれています。

血友病は、血液凝固が起こりにくくなる遺伝病で、X染色体長腕上の先端近くにある遺伝子が関係しており、伴性遺伝の例としてよく知られています。ニコライ2世の妃であるアレキサンドラが血友病の保因者だったのです。アレキサンドラ皇后は大英帝国のヴィクトリア女王の孫で、ヴィクトリア女王も保因者だったので、その遺伝子を受けついてしまったのです。

写真は、立っているのがニコライ2世、前列右がヴィクトリア女王、左がアレクサンドラ皇后で長女オリガを抱いています。

ヴィクトリア女王とその子、孫などの一族の家系図を示します。

系図は、第75回日本血液学会学術集会(2013年)斎藤英彦「血友病物語」のページのものを改変

系図を拝借した元のページには、血友病やヴィクトリア女王などのことが詳しく書かれていますので、リンクをクリックしてご覧ください。でもって、これを読んでわかったことがあります。講義では、ヴィクトリア女王の血友病は第8因子タンパク質をコードしている遺伝子の欠陥による血友病(A)として説明したのですが、2009年に、これとは別な第9因子をコードする遺伝子(お互いに隣接)の欠陥による血友病(B)であることが明らかにされたそうです(Rogaev EI, Grigorenko AP, Faskhutdinova G, Kittler EL, Moliaka YK. Genotype analysis identifies the case of the “royal disease”. Science. 2009; 326: 817.)。間違えました、すみませんでした。

血液凝固のカスケードの大まかな図を載せておきます。
かなり複雑な反応ですが、第8因子あるいは第9因子が欠陥だと、反応が進まなくなり血液凝固が起こりにくくなります。これが血友病という遺伝病です。上で述べたように、X染色体の長腕の末端近くにあるので、伴性遺伝をします(詳しくは後で説明します)。

http://blog.san-x.co.jp/toretate/2012/11/post_620.htmlより

長い枕でしたが、ここから、遺伝とはどういう現象か、遺伝子とは?DNAとは?というお話になります。最初に登場してもらうのは、もちろんメンデルです。メンデルはエンドウを使い、遺伝の法則というか、遺伝を説明するスキームを明らかにしました。

子どもが親に似るということはよく知られていましたが、なぜ?を説明することは長い間できませんでした。当時は、たとえば紫と白の花の色のような形質は、交配すると混ざってしまうと思われていました。メンデルは観察を通して、混ざってしまうのではないと確信して、実験を計画します。十分に時間をかけて純系(たとえば花の色に関して、自家受粉をすると紫の花あるいは白い花の一方しかつかない系統)を得て実験を開始します。

純系の紫色の系統と白い花の系統を掛け合わせると、雑種第一代はすべて紫の花になりました。
こうして得られた雑種第一代どうしを自家受粉しました。その結果は、紫の花と白い花は705:224で、整数にすると、3:1でした。

メンデルは、花の色以外の6つの形質でも同様な結果であることを実験で示します。実験で得られたこれらの結果を説明するために、メンデルは次のように考えました。

1)一つの形質に対応する独立した「要素」という概念を導入
2)「要素」は、一つの形質に対してペアで存在し、生殖細胞(植物の場合は胚珠内の卵と花粉管の精細胞)が作られるとき、二つに分かれて分配される
3)「要素」には、優性(顕性)と劣性(僭性)の性質があり、ペアの一方が優性だと劣性の表現型は覆い隠される

こう考えると、次のパネットの方形で表されるように、うまく説明することができます(もちろん、メンデルは論文の中で、このような方法では説明していません。文字と数式を使っていますが)。花の色という形質に対して、優性のFと劣性のfを考えます。純系の紫の花はFFで、白い花はffと表すことができます。
これを掛け合わせると、すべてFfになり、優性の紫色の花をつけます。

こうして得られた雑種第一代Ffを自家受粉すると、次のようになります。

その結果は、FF:Ff:ff=1:2:1となり、Ffは上と同じように優性の形質が現れるので、紫の花:白い花=3:1になることが説明できます。

実験結果を整数にして要素という単位(粒子)概念を導入したりして、今考えてみても非常にすっきりとしています。これはメンデルがウィーン大学に内地留学して、当時の物理的な考え方に触れていたためだろうと言われています。でも、1865年の論文の発表当時は、メンデルのこの考えは全く理解されませんでした。

彼の死後、1900年になってメンデルの法則は再発見されます(正しくは論文として掲載されます)。つまり、ド・フリース、コレンス、チェルマックが実験で明らかにしたことが、すでにメンデルによって論文として発表されていたことを見つけるのです。

再発見されたときは、すでに顕微鏡が発達し、核の中に染色体(下の図を参照)という構造があり、ペアで存在する相同染色体が生殖細胞を作るときに減数分裂によって、それぞれの生殖細胞に分配されるということが観察されていました。こうして、メンデルが「要素」と考えた概念的な粒子は、染色体上に配列する実体だととらえられるようになり、遺伝子(gene)と名付けられます。

ここで伴性遺伝について説明しておきます。ヒトは46本の染色体を持ち、22対44本は常染色体で、同じ大きさの染色体がペアであります。性を決める性染色体には、XとYがあり、XXだと女性、XYだと男性になります。XとYは大きさが異なり、YにはXの長腕に対応する部分がありません(ちなみに下の図では、ペアになった染色体の一方も真ん中で結合した二本に見えますが、これは細胞分裂の中期の染色体だからです。普段は一本です)。
カナダMemorial Universityのページより 著作権Steven M. Carr

そのため、Xの長腕の端にある血友病の遺伝子の場合、男性のYでは対応する相手がなく、劣性だとその性質が現れてしまいます。次の図は、保因者のアレクサンドラと正常なニコライ2世が子をなした時に、現れるであろう血友病の遺伝をパネットの方形で示したものです。
確率として、女性では正常と保因者が1:1、男性では正常と血友病患者が1:1になります。アレクセイは左下ではなく右下になってしまったんですね。

メンデルの選んだ7つの形質のうち4つが、現在のところ、どのような遺伝子によるかが明らかになっています。そのうちの豆が丸いか(R)、しわがよるか(r)の対立形質について触れておきます。デンプンは直鎖のアミロースと枝分かれのあるアミロペクチンの混合物です。アミロペクチンは、アミロースから枝分かれ酵素によってグルコースが付加されてつくられます。Rはこの枝分かれ酵素の遺伝子だったのです。Rが欠陥品だと、アミロペクチンができず、原料のグルコースが余ってしまいます。すると浸透圧の関係で豆の中に水が蓄えられ、実がなった後の乾燥の過程で、この水が失われてしわがよるのです。

このように、目に見える形質は、酵素タンパク質によって現れ、そのタンパク質を作る設計図が遺伝子なのです。ヒトでは、上の写真にある22対+2本の性染色体の上に、とびとびに遺伝子が並んでいることが、モーガンのショウジョウバエの実験で明らかにされます。血友病の場合は、第8因子と第9因子と呼ぶ酵素タンパク質の設計図がX染色体上の長腕の端の方にあるのです。

それでは遺伝子の本体は何なのでしょうか。いくつかの実験で(詳しいことは省略)、DNAであることが示されました。DNAはデオキシリボースとリン酸のつながった共通骨格と、A、C、G、Tの4つの塩基から構成されています。このDNAの構造がワトソンとクリックによって明らかにされたのが、1953年でした。二本の共通骨格が、梯子の縦木となり、そこから足を掛ける横木が一定間隔で固定され、ひねりを加えた二重らせん構造をしています。横木は、上記の塩基がA:T、C:Gの組み合わせになっています。

4種類しかない塩基が、どうして20種類のアミノ酸をコードできるのか最初は謎でしたが、4つのうちの3つの塩基の組み合わせが64種類あるので、これでカバーできるというガモフの示唆で実験が始められ、実際にその通りであることが示されます。こうしてすぐに、64通りの組み合わせがどのアミノ酸をコードしているのかが明らかにされます。下の表内にあるアルファベット3文字がアミノ酸の略称です。タンパク質は、ここにある20種類のアミノ酸が並んでつながった分子で、アミノ酸の性質によって、酵素だとか抗体だとか、受容体だとかのさまざまな機能を発揮できるのです。DNAは、アミノ酸の並び方をACGTの文字で書いた設計図なのです。

最初に述べた血友病や豆の形で、欠陥品の酵素がつくられたのは、設計図である塩基の文字が変わってしまったため(あるいは抜けてしまったため)に起こります。このようなDNAの塩基の変化を突然変異と言っています(これ以外に染色体突然変異もあるが省略)。たとえば、上の表でTTTはPhe(フェニルアラニン)をコードしていますが、もしも3文字目のTがAに変わってTTA になると、コードしているアミノ酸はLeu(ロイシン)になってしまいます。これが突然変異にです。

3文字目のTがCに変わっても同じPheをコードしているので、すべての突然変異がアミノ酸の変更を起こすわけではありません。表内に3つStopとありますが、これは区切り、すなわちピリオドを意味するコードで、これ以降の塩基の並び方は意味を失います(ミスセンス突然変異)。文章の途中に突然、ピリオドが現れて本来のものより、短い文章になってしまうことに該当します。

ここまでお話した血友病や豆の形の例は、1遺伝子→1タンパク質→表現型(形質)という単純なものでした。形質の中には、複数の遺伝子が関係するものがたくさんあります。背の高さや顔の表情などがその例です。

その例として、「ハプスブルグ家の下顎」について簡単に触れておきます。下の絵はベラスケスが描いたフェリペ4世の肖像画です。下唇と下顎が前に出ているのが見て取れます。

オーストリアとスペインのハプスブルグ家の家系図を見ると、このような特徴的な風貌を持った王様がたくさんいることがわかります。遺伝病なのです。スペインハプスブルグ家の最後の王様であるカルロス2世は、ひどい下顎突出症で、おまけに知的障害があり不能で、早く亡くなります。その結果、スペイン継承戦争がヨーロッパ全体を巻き込んで起こります(1701-1714)。

現在までのところ、骨格性下顎前突症に関与する遺伝子は、完全に解明されてはいませんが、いくつかの候補が挙がっています(BMP3, ANXA2, FLNB, HOXA2, , ARHGAP21のミスセンス突然変異)J. Dent. Res. 94, 569-576 (2015)。このうちBMPが興味を惹かれます。BMPは発生の過程で遺伝子の発現を調節するように働くタンパク質をコードしています。

何故興味深いかというと、ダーウィンフィンチの嘴の形に、このBMPの発現量の違いが関係しているからです。硬い実の殻を割ることができるように、嘴の高さが高くなった種では、BMPの発現量が多いのです。ヒトの場合も、下顎の発生の過程でBMPの発現量が多いと、顎が突出することは大いにありうることです。ただBMPだけでなく、さらにいくつかの遺伝子が関係しているのでしょう。

最後に、がんのついてちょっと触れました。

がん発症のメカニズムとして、よくアクセルとブレーキの話が出てきます。アクセルが踏み込まれた状態になり、ブレーキが利かなくなると、がんになるというものです。アクセルもブレーキも、実はタンパク質です。したがって突然変異が起こる可能性があります。

これらのタンパク質(ドライバー遺伝子)をコードしている遺伝子は、およそ200種類あると考えられています。突然変異は、一定の頻度で生じると考えられています。もちろん修復機構が備わっていますが、それをすり抜けてしまう突然変異もあり得ます。ドライバー遺伝子に起こる突然変異が2から6個貯まると、がんが発症するそうです。

突然変異の要因となる変異原に、なるべく晒されないようにするのがベターです。喫煙が一番の引き金です。

これでおしまい。

上の記述では、体細胞分裂、減数分裂、遺伝子の本体解明、DNAの構造など、かなり省略しました。詳しい説明は下記の本をご覧ください。

「生物学の基礎ー生き物の不思議を探る」和田勝著、東京化学同人、2012.
「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第3版」和田勝著、羊土社、2015

羽村市立栄小学校での活動

木下宙会員が、3月12日の午後、羽村市栄小学校で4年生2クラスの児童40名余りと教員3名に対して、「はやぶさ2のリュウグウへの旅」というタイトルで授業を行いました。

小惑星探査機「はやぶさ2」は、2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIロケットにより打ち上げられました。2015年12月3日にスイングバイ航法によりリュウグウの軌道に飛び移り、リュウグウを追いかけています。予定では2018年6月末から7月初め頃にリュウグウに到達する予定です。
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/mission.htmlより

なお、小惑星、地球の起源、スイングバイ航法などの詳細については、2016年11月26日の狛江市立第二中学校での活動のページをご覧ください。

最近の新聞で、下のような写真を見た記憶がある方もいると思います。JAXAからプレスリリース(3月1日)された写真で、目的地のリュウグウを写真撮影することに成功したというものです。このときのリュウグウまでの距離はおよそ130万km、です。

JAXAプレスリリースページより。

この記事を投稿した3月19日11時58分の時点で、距離は789001.08kmとなり、数値は見ているうちにぐんぐん減って、リュウグウに近づいているのが実感できます。リュウグウまでの距離は、はやぶさ2プロジェクトのトップページに表示されています。

今後の予定では、2018年6月末から7月初め頃に小惑星「リュウグウ」に到着し、装置を使って表面と内部の物質採取し、1年半ほどリュウグウに滞在します。その後、2019年末ごろに小惑星を出発し、2020年末ごろに地球へ帰還する予定です。

はやぶさ2の科学的な目的は、太陽系初期に誕生したときの状態を保持していると考えられている小惑星から物質を採取して、太陽系誕生と、生命誕生のもとになった有機化合物などの情報を得ることにあります。

どうしてリュウグウを狙ったか、それはイトカワ(下の写真の左)とリュウグウ(同右)では、種類が異なるからです。イトカワはS型で、リュウグウはC型なのです。C型小惑星の方が、水や有機物が多く含まれていると考えられているのです。

小惑星イトカワの表面物質を採取し、艱難辛苦を乗り越えて地球に戻ってきた「はやぶさ」の旅についても話をしました。

はやぶさ2プロジェクトに関して詳しくはJAXAの該当ページをぜひご覧ください。面白い記事満載です。

市川学園市川高等学校での活動

廣田穣、細矢治夫、町田武生、和田勝会員が、3月10日の午後に、市川学園市川高等学校で開催されたSSH年度末課題研究成果発表会に参加し、生徒が発表する、数学を含む理科の成果を聴きました。市川高等学校はSSHの指定を受けているので、理系の高校2年生は全員が課題研究に取り組んでいます。SSISSは課題研究の計画の段階、中間発表会にも参加して、助言を行ってきています。今回は、その最終段階の発表を聴くことになります。

この日は「市川アカデミックディ」と称して、午前には高校生が教える理科・算数 小学生体験講座が開かれていて、近隣の小学生が参加し高校生が教えるというスタイルの催しがあったようです(参加していないのでこの表現ですが)。

「教えることは学ぶことだ」と実感している筆者にとっては、有意義な試みだと思います。

これと並行した午前中のもう一つのイベントは、中学生の研究発表、海外研修報告、高校生の代表生徒による課題研究発表が行われています。

さて、午後の部が生徒さんの司会で始まりました。広いアリーナにはパネルがたくさん並び、ポスター発表が展示されています。数学だけは口頭発表なので、ステージの両脇にブースが用意されていました。校長先生ではなく代理の方が開会のあいさつをしました。

発表は全部で138点あり、分野別では数学が10、物理が65、情報が6、化学が23、生物が34でした。上に述べたように数学だけは口頭発表、その他はすべてポスター発表でした。偶数番号と奇数番号に分け、1時間ずつで入れ替わりました。

生徒さんも、コメントシートをもって、熱心に聞き、発表の内容、発表者が工夫した点、感じたことを書きこんでいました。我々もそれに交じって発表を聴き、質問し、こうしたらよかったかも、とコメントしました。総じて研究の内容のバラエティーが増し、興味深い視点で行われた研究が多くありました。

課題研究に交じって、国内研修や海外研修の報告がありました。たとえば、「音で心の手を繋ぐ」や「フランスピアノ留学」、「オックスフォード海外研修」などです。異なる文化に触れて、多くのことを学んだことが記されていました。

また、「高校生が棚田を変える」という高校生ビジネスプランでグランプリを取得したもの、福島モニターツアーに参加した報告などの発表が掲示されていて、興味をひかれました。

八王子市立高尾山学園での活動(7)

町田武生会員が2月27日の午後、八王子市立高尾山学園で、「からだはさいぼうからできている」というタイトルで実験授業を行いました。参加した児童・生徒は3名、教員が3名でした。

この実験授業のねらいは、身体を構成するさまざまな組織・細胞を顕微鏡で観察して、いのちが細胞により保たれていることを考えてみることです。

最初に、細胞の概容にふれた後、ヒトの体は、1個の卵から始まって、細胞総数およそ37兆個になること、そのうちおよそ26兆個は赤血球であること、神経細胞は5千億個できるが、その8割は死滅して、残るのは1千億個であることなどを示しました(下の図は上から順に、細胞の模式図、赤血球、神経細胞)。
  http://www.stnv.net/med/erythrocyte.htmより
  http://manabu-biology.com/archives/42271371.htmlより

次にマウスの解剖図を配布して、体を構成する器官・臓器の説明を行いました。顕微鏡を用いて、各人の口腔上皮細胞の観察を行ってもらいました。

ついで、用意した組織プレパラートで、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、甲状腺、大脳などを、顕微鏡で観察して、スケッチをしてもらいました(下の図は上から小腸、甲状腺)。
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/2anat/cn9/cn12/cn18/pg161.htmlより
  http://www.agri.tohoku.ac.jp/keitai/scope.htmlより

これらを見ながら、体を構成する細胞には、生涯にわたって分裂を続けるものがある一方、生まれた後は増えることなく、ずっと存続するものがあることを説明しました。筋肉細胞、脂肪細胞、卵細胞、神経細胞が後者の例であること、特に神経細胞の特異さを理解してもらおうと努めました。

生徒たちは進んで観察し、楽しんでいるように見えました。点と線で行うスケッチ画を、とりわけ楽しんでいる生徒がいました。

生きることが細胞によってもたらされていることを考え、命の大切さと結び付けて考えられるようにしたいと思い、そのように努力をしました。

私立聖徳学園小学校での活動

大井みさほ会員が、2月19日の午後、私立聖徳学園小学校で、「光とは何か」というテーマで、講義、演示実験、実験を含む特別授業を行いました。参加した児童は、5,6年生の理科希望者28名、理科教員が2名でした。この理化特別授業は、1年おきに実施してきていますが、毎回、少しずつ、内容は変わってきています。

先方の依頼により、レーザーについての話を長くしました。また、光が水中に入るときの屈折の説明を詳しくしました。

実験台にレーザーポインターと水槽を用意し、レーザー光を使って水槽内の水の中を通る光路および、反射、屈折の観察と実験を行ないました。

レーザー光が、透明なアクリル棒中を全反射して進む様子を演示実験で見せ、光ファイバーの中を通る様子も示しました。

回折格子片を配り、各自が工作用紙で簡易分光器をつくり、蛍光灯のスペクトルの観察を行いました。初めからやると時間がかかるので、工作用紙にはあらかじめ図面を描いておいてもらい、それを配布しました。2人の理科教員が実験を手伝ってくれたので、比較的スムースに工作することができました。

実験終了後に、学習したことのまとめを各児童に書いてもらって回収し、後から送ってくるとのこと、どんなことが書かれているか、楽しみです。

熱海ホテルニューアカオでの活動

和田勝会員が、熱海のホテルニューアカオで開催された東京ゴム薬品商同業会総会の後に、総会参加者向けに行われた講演会で、「ウグイスのお尻を追いかけて -マッチョであるのも結構、大変ー」というタイトルで、多数のスライドを使って講演しました。参加者は同会理事長をはじめ25名でした。

わかりやすく、なおかつおもしろく話してほしいと依頼されたので、40年、鳥の内分泌学の研究を行ってきたと自己紹介をした後、日本画に描かれた鳥の絵を示して、鳥の骨格から見て、脚の描き方はこれではおかしいので、とても気になります、というところから話を始めました。
上の左の絵、脚の描き方が気になります。鳥の骨格は次の図のようになっています。
この鳥の場合、大腿骨と膝は腹部の羽毛の中に隠れています。したがって、勝手に手を入れて直した右の図のように、かかとにあたる部分が後ろ側にあって、そこから跗蹠骨が前に伸びているはずです。ちなみに跗蹠骨はヒトの中足骨にあたり、ヒトでは複数あるけれど鳥類では融合して一本です。つまり、トリはつま先立ちで歩いているのです。でもこんな話から始めたら、わかりやすく、おもしろく、ではなくて、理屈っぽいって印象を与えたかも。

ちょうど当日は2月14日のバレンタインデーでした。この日がなんでチョコレートを贈る日になったかはともかく、昔から植物が芽吹き、鳥が囀り始める日とバレンタインの殉教と結びついて人々が祝うようになりました。冬至からほぼ2か月、日の長さが長くなったと感じ始めるころなのです。でもって生物季節の一つである、ウグイスの初鳴き日がちょうどこのころにあたります(地域によって異なりますが九州ではそうです。東京ではもう少し遅いかも)。

これをきっかけに、ウグイスの紹介。日本人は誰でも知っている鳥ですが、意外と研究されていないのです。それでウズラで培った知識や技術で、ウグイスの繁殖生理学の解明に乗り出したのです(ちょっと大げさ)。

ウグイスを使った研究成果のお話に入る前に、鳥についての一般的なこと、体を軽くして飛ぶためにどのような進化をしたのかと、繁殖の内分泌学のお話をしました(この辺りはこちらのページを見てね、まだ未完成だけど)。

野生の鳥であるウグイスの研究をしようとすると、捕獲しなければなりません。捕獲するためには環境省が発行する鳥獣捕獲許可証が必要です。許可証を取得するためには、委託を受けた山科鳥類研究所が行っている講習会に参加して、見極めテストに合格する必要があります。実習は新潟県福島潟にある観測ステーションで行われるので、何とかスケジュールを調整して参加しました。泊まり込みです。こうして捕獲許可証を取得してバンダーに一応なって、金属製の番号の入った足環をつけられるようになりました。プラスチック製の色足輪も購入しました。

ウグイスの紹介をした時に話したことですが、古くからおこなわれていたウグイスの飼養は、江戸時代にはとくに盛んになり、鳴き合わせが行われました。早く鳴き始めさせるために、蝋燭で昼の長さを長くする「夜飼い」が行われていました。そこで、霞ヶ浦で捕獲したウグイスを使って、夜飼いを行ってみました。
短日(8L16D)から長日(16L8D)に移して7日目になると囀り始め、血中テストステロン濃度も10倍近くに跳ね上がっていました。

さて、ここからがフィールドでの研究です。繁殖期になるべく多数のウグイスを捕獲しなければならないので、場所の選定が重要です。いろいろと情報を聞いて、東京大学付属秩父演習林をフィールドとすることに決めました。講義の合間を縫って、勤務地の千葉県市川市から、器材と学生を乗せた車を駆って、関越自動車道を花園インターまで走り、国道140号を西へ、秩父市を抜けて川俣にある東大の自炊宿舎まで走ります。2泊3日の日程で、これをほぼ毎週繰り返しました。

鳥類では多くの種に羽装の性的二型が見られますが、ウグイスの場合は羽装は雌雄で同じです。違いは体重で、オスはメスのほぼ二倍の体重があります。
演習林栃本地区の入川の沿って進んだ矢竹沢近辺での観察によると、オスは縄張りを構えて3月末から8月末まで囀り続け、複数のメスを縄張りに誘い、営巣、産卵、子育てをすべてメスに任せている一雄多雌の繁殖連略を取っていることが明らかになりました。

ここからはカスミ網を使った捕獲です。カスミ網を張って、録音した他個体の囀りを網の近くで再生すると、縄張り保有オスは興奮して盛んに囀り、場合によってはカスミ網に突進してかかってしまいます。かかったら網から外し、翼静脈を穿刺して、出血した静脈血をヘマトクリット管で吸い取ります。採決した後、ウイスの体重、翼長、跗蹠長を測定し、話してやります。たいてい、ウグイスはすぐに自分の縄張りに戻ります。ヘマトクリット管は宿舎に帰った後、遠心して上澄みをハミルトン注射器で吸い出して遠心チューブにとりわけ、研究室に持ち帰ってラジオイムノアッセイ法でテストステロンとコルチコステロンを測定します。

囀りを聞かせ始めてから30分の間(網にかかった場合はそれまでの間)に、囀りを聞かせ始めてから(プレイバック法)何分で囀り返したか、囀りと谷渡りの数は何回だったか数えます。結果の一部は以下の通りです。このグラフはさえずりの結果です。

雄性ホルモンであるテストステロンの血中濃度は、この間ずっと高いままでした。

詳しい結果は、小生の自前のページの研究タブー>ウグイスの項の原著論文をご覧ください。

これらの結果は、一雄一雌の繁殖戦略をとる鳴禽類の結果とは異なっています。一雄一雌の種では、メスが産卵し抱卵に入るころになると、オスは囀りを止め、餌を運んで子育てに参加します。これに対してウグイスは、マッチョをずっと維持するんですね。

ここまではプレイバック法で捕獲したので、縄張り保有オスだけを捕獲してデータを得ている可能性が高いので、プレイバックせずにカスミ網にかかるのを待って、うまく網にかかった個体から採血することにしました(パッシブネッティング)。縄張り保有オスかそうでないあぶれオス(フローター)かを確認するために、対象場所を狭めて、そこに縄張りを構えているオスを確定して、捕獲することにします。しかしこれは、言うは易しでも行うは難しです。ともかく時間がかかるのです。

こうして、なわばりを確定して精査すると、なわばり保有オスとあぶれオスの間で、体重、跗蹠長などの体格、血中テストステロンとコルチコステロンに差がありませんでした。今これを書いていて気が付いたのですが、この結果は論文にしてませんでした。ネガティブデータだから書きにくかったと感じたのでしょう(当時は)。でも、おもしろい結果が出ているので、今書いていて、論文にしておいた方がいいと感じました。たとえば捕獲法の違いによって、血中テストステロン濃度が異なります。
血中コルチコステロン濃度の方があまり差がみられません。ところがオスとメスでは、血中コルチコステロン濃度がかなり異なります。

さらに、適当なプライマーを決定して、マイクロサテライト法で親子判定をしました。
その結果、あぶれオスも子供を残している可能性が示唆されました。この結果は詰めが甘いのですが、可能性はかなり高いと思っています。

ウグイスは、どうしてこのような繁殖戦略をとっているのでしょうか。子孫をなるべく残すためには、オスから見たら

1)つがいを維持してメスをガードし、育雛にも参加して確実に雛を育てる
2)なるべく多くのメスを獲得し、多くの雛を残す努力をする

の二つの戦略があります。笹薮に適応したウグイスは、競争者がいないのでその豊富な資源を独占することができたのですが、ヘビなどによる高い捕食圧、カッコーによる托卵などのために、繁殖の失敗が多くみられるようです。したがって、2の戦略を取った方が有利だったのでしょう。そのために内分泌機構も、この繁殖戦略を支えるように進化したと考えられます。

生物の基本原則である進化は、身体的な特徴である形質だけでなく、繁殖戦略にも当てはまり、環境に適応してそれぞれの繁殖戦略が進化しているが、それを可能にしているのがホルモンによる生理学的な機構であることを強調しました。

講演が終わった後、鳥全般のものも含めて、たくさんの質問を受けました。