八王子市立中学校PTA連合会との打ち合わせ

八王子では、毎年八王子市中学校科学コンクールが行われています。このコンクールは八王子の市立中学校の生徒が応募した自由研究から優秀なものを選ぶ催しで、毎年開かれています。主催は八王子市教育委員会と中P連で、本会はこの催しに協賛として参加しています。下のポスターは、作品募集のためのものです。

 2025年9月7日に、本年開催される第17回のコンクール研究発表会・表彰式について、八王子市立中学校PTA連合会(中P連)と本会との打ち合わせがオンラインで行われました。本会からは町田理事長、小林、坪村、西原、和田各会員が、中P連からは廣田中P連会長、田井さん、島村さん、伊藤さん、岩崎さんが参加されました。

 参加者の自己紹介に続き、今年度のコンクールの概要が説明されました。今年の研究発表会・表彰式は12月6日に開催されますが、概ね例年通りの実施状況、すなわち、あらかじめ選ばれた優秀作品についてレゼンテーションがなされ、表彰式が行われるとのことでした。本会の協賛の内容について打ち合わせを行いました。

 最後に今後の生徒研究の支援について意見交換を行いました。特に小学校教育充実が必要などの意見を共有して打ち合わせを終了しました。

立教池袋中学校・高等学校での活動

2025年8月23日に立教池袋中学校・高等学校センテニアルホールで開催された2025年度同校科学部・生物部合同研究発表会に、当会からも会員8名が参加し、発表を視聴し質疑討論を行いました。

中学1年生から高校3年生まで科学部生6件、生物部生7件の計13件の発表が行われました。SSISS会員以外には、立教大学理学部教授、大学院生・学部生、保護者なども多数参加して、活発な質疑応答がなされました。

科学部からは、色素増感太陽電池関連の研究が3件あり、そのほかに合成樹脂を作る研究や炭による吸着の研究などがありました。生物部からは、魚や昆虫関連の研究から植物の研究まで様々な研究が発表されました。

発表はどれも部活動の中で意欲的に取り組んでいる姿が垣間見えるものでした。中にはこの先の結果次第で専門誌に投稿できそうなものまであって、今後の発展が期待されます。中学1年生が取り上げている研究課題も、今後の展開を見据えた興味深い取り組みでありました。

それぞれの研究の中には、テーマ設定で既知の知見の十分な検索と何を調べるべきかの理解にやや不十分なところがあったり、実験計画の中で対照群の設定が欠けていたり、実験例数の確保が不足しているものも見られましたが、まだ中間状況の発表会とのことでもあり、今後の発展を大いに期待したいと思います。

やはり、高校生の発表は総じて内容もプレゼンも素晴らしく、生徒さんの中等教育期間中での大きな成長と顧問の先生方の熱心なご指導が感じられた発表会でした。今後立教大学理学部の専門家などの指導を受ける機会があればさらなる成果を上げられるのではないかと思いました。

埼玉県川口市立安行小学校での活動

本会の佐々田博之会員が2025年8月27日と28日の二日間、安行小学校にて6年生の児童4クラス合計124名を対象に実験授業を行いました。学校の先生方も合計5名参加されました。

 「光の進み方」の実験を1クラスあたり2校時(45分×2)行いました。光が直進することは4年生で学んでいますが、今回は中学で扱う屈折と反射を取り上げました。1班4人に分かれ、水槽の真水の下に濃い砂糖水を入れて、二重の層を作り、LEDとレーザーポインター(後者は大人が操作)の光を入射し、真水と砂糖水の境目(界面)で、光が屈折、反射、全反射する光路を観測しました。光速が異なる媒質の界面で光路が曲がることを説明した上で、このことが、逃げ水や蜃気楼、川の底が実際より浅く見えること、さらに光ファイバーに関連していることを説明しました。最後に、水で膨潤した玉とビー玉を水に入れ、ビー玉の個数を当てさせました。前者は光速が水と近いため水中では見えず、水から出すとたくさん玉が入っているのがわかり児童達は驚いていました。膨潤した玉はお土産として1人1個ずつ持ち帰ってもらいました。

江戸川区子ども未来館での活動

江戸川区子ども未来館(画像は江戸川画像文庫https://photo.city.edogawa.tokyo.jp/pages/home.phpを当会で修正)

2025年8月22日に、当会の和田勝委員が、江戸川区子ども未来館にて「生き物は細胞でできている」というタイトルで実験授業を行いました。「動物や植物の「細胞」を知ることは、生物学の基本です。ミクロの世界へのパスポートである 顕微鏡を使いこなし、600倍まで拡大して細胞のかたちやはたらきを観察しましょう。」として事前に募集が行われ、80名越えの応募があったとのことです。定員は16名で狭き門となり、実際には小学校4年生から6年生の15名の参加者がありました。

まず顕微鏡の使い方を教え、単細胞生物のゾウリムシを観察しました。次にタマネギ鱗茎葉内側の細胞層をはがし、無染色と酢酸カーミンで染色したサンプルを観察しました。細長い敷石が並んでいるような細胞が観察できました。トマトの表皮も同じようにして観察しました。

次いで綿棒で頬の内側をこすり取りスライドグラスに擦り付け、酢酸カーミンで染色して観察しました。みんな自分の細胞を観察できて喜んでいました。

細胞という言葉を覚えてほしいことと、体が大きくなるのはこの細胞が分裂して増えていくためであることを、ウニとカエルの発生の動画を見せて説明しました。

 感想シートではおおむね好評で、「自分のさいぼうをみるところがとてもたのしかった。」とか、「「研究員」になったみたいで、けんびきょうをマスターでき、本当にうれしかった。」などのコメントがあり、皆さんにも楽しんでもらえた様子が伝わってきました。

東村山第三中学校での活動

2025年7月1日の夕方に、黒田智明会員が東村山第三中学校の自然探究部の活動の一環として1時間弱の講義を行いました。生徒は自然探究部所属の1年生から3年生まで、約20名が聴講しました。顧問の福島先生にもご参加いただきました。

講義では、会員の現役時代の研究「中国の雲南省から四川省にかけての地域に生育するある種のキク科植物の根の化学成分の進化」ついて噛み砕いて解説しました。初めに、中学校では有機化学を学んでいないので、原子、分子に関する基礎知識について述べました。すなわち、分子は原子が「手をつなぐ」ことでできる、「手」の数は炭素原子で4本、酸素原子で2本、水素原子で1本、という説明をしました。

続いてフィールド調査から分かったことについて話しました。植物は様々な作用を持つ成分を含んでいます。特に今回調べた植物の根には、テルペン類と呼ばれる成分が含まれていますが、同じ種類の植物でも、生えている場所によって化学成分に違いがあることがわかりました。特に物質の構造の一部分が大きく違っており、下の図のAとBのように違っていることを板書して示しました。炭素原子を黒丸(板書では黄色を使いました)、酸素原子を赤丸、水素原子を小さい青丸で表し、各原子から出る「手」の数を確認しました。

さらにAとBの植物の分布状況から、植物の進化の関係もわかる、という話をしました。ここで炭素原子の並びは変わっていない点を確認しました。進化の過程で、酸素原子や水素原子の増減は比較的容易に起こるが、炭素原子の並びは簡単には変わらないことを述べました。

参考資料として、上の図AとBの省略部分も含めた構造式を配布しました(中学校では扱いませんが、一般にはこのような書き方をすることを説明しました)。なお関連して、参考資料には人間生活に関係のある数個の天然有機化合物の例もいくつか示しました。

後半では、植物はなぜいろいろな化学成分を作るのか、種子散布の観点から簡単に解説しました。「植物は生きるために必要な物質を光合成で得ることができるので、動物のように食料を求めて動き回る必要がない。しかし、根を張って動かないと種子を遠くに運べない。そこで、動物に種子を運んでもらうという選択をした植物がある。運んでもらうお礼に美味しい果実を作るけど、中の種子は食べられたくないので毒を仕込む」という話をしました。

例として梅や桃が作る化合物を取り上げ、板書して説明しました。動物がこれを食べると、胃の中で糖が切り離されるため、シアン化水素という猛毒物質が生成します。化学的に示すと下図のようになります。

植物が種子を運ぶ他の方法としてタンポポのように「風に乗る」方法がある、という説明した後、さらに別の方法があるかを生徒に質問したところ、「弾き飛ばす」という回答がありました。

風に乗るタンポポの種

講演後に、簡単な質疑応答を行い、この日の活動を終了しました。化学の難しい内容も含めましたが、質疑応答の様子からも大筋の内容は理解いただいたと思います。

(最後の図はPiccoloNamek at English Wikipedia – Own work (Transferred from en.wikipedia to Commons by Maksim.), CC BY-SA 3.0 による, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=528340)