江戸川区子ども未来館での活動(3)

大井みさほ会員が、8月13日の午後に、江戸川区子ども未来館子どもアカデミー夏休みプログラムの一つとして「光の進み方」というテーマで、小学校児童3年生から6年生 12名に実験授業を行いました。

初めにレーザーの原理についてのイラスト資料を配り、かなり詳しく説明をしました。 レーザーという言葉はよく聞く言葉になっていますが、 light amplification of stimulated emission of radiation(誘導放出による光増幅放射)という言葉の頭文字をとったLASERを発音しているのだと、すぐに言える人は少ないのではないでしょうか。 レーザーとは、もともとは単色性にすぐれ、干渉性のよい電磁波を発振する原理あるいはそれを利用した装置を指す言葉で、そこから発生するのがレーザー光です。
レーザーは、大型の工作機械から医療機器など、様々な分野で使われていますが、身近なものはレーザーポインターではないでしょうか。

そこで、緑と赤のレーザーポインターを使って、大気中、水中およびプラスチック角棒と光ファイバー中での光の進み方を観察しました。さらに水と空気の境界での屈折、反射を観察しました。このあたりの様子はすでに、活動報告に書いていますので、そちらをご覧ください。

光ファイバーを使って、光通信の原理を実験で確かめました。また、持参したキャラメルの空き箱などと、回折格子片を使って、分光計を製作し、蛍光灯の光などの観察をしました。空き箱利用で工作時間が昨年より大幅に短縮でき、その分、観察時間を増やことができました。

今回の実験授業には、東村山市教育委員会委員の方と小学校校長先生が見学されました。今後予定している、東村山市での活動につながるものだと思います。

江戸川区子ども未来館での活動(2)

和田勝会員が、8月12日の午後に、江戸川区子ども未来館子どもアカデミー夏休みプログラムの一つとして「生き物は細胞でできている」というテーマで、小学校児童4年生から6年生 16名に実験授業を行いました。 2時間では時間が足りずにあわただしいので、今年も午後1時から4時まで、3時間の枠を取ってもらいました。

受講者が実際に手を動かす時間を長くとるよう、今回は説明をなるべく少なくしました。ざっと顕微鏡の操作法を説明し、単細胞生物のゾウリムシの観察を行ってもらいました。サイズが比較的大きいので、低倍で観察でき、動き回るので興味を引くからです。どのように動くか、よく観察するよう促しました。
次のYouTubeのURLをクリックしてみてください。投稿された興味深い動画を別画面で見ることができます。
https://youtu.be/dpQ8ZqXCEkw

単細胞生物と多細胞生物の説明をして、多細胞生物の植物の例として、タマネギ鱗茎葉の表皮細胞を染色せずに観察しました。それぞれ、自分でカッターナイフを使って、一片の鱗茎葉の内側の表皮に切り込みを入れて、ピンセットでなるべく薄く剥ぎ取ります。

次いで酢酸カーミンで染色して観察しました。染色により1つ1つの細胞に核がきれいに見えます。

次にミニトマト果実の表皮細胞を観察しました。タマネギの場合と比べて、細胞の形、大きさ、色、配列の仕方の違いを考えるように促しました。植物細胞には、細胞壁があるという話も少ししました。

タマネギに戻って、鱗茎葉の表と裏、あるいは場所によって違いもあるかどうか、観察してみたらと言いましたが、食いついた人はいませんでした、残念。

動物細胞の例として。自分の頬の内側の表皮細胞を綿棒でこすり取り、染色して観察しました。今回はすべての人がうまく観察することができました。

ここで植物細胞と動物細胞の違いを説明しました。 最後にネギの根端組織の細胞を観察してもらったのですが、あまりうまくいきませんでした。そこで、細胞分裂の動画を見てもらい、多細胞生物は細胞分裂により細胞の数を増やして成長するんだよと、強調しました。

今回は、スライドをあまり使わずに、白板に字を書いて説明するようにしました。また、手際よく進められたので、時間内に予定した項目を終えることができました。回収された発見カードを見ると、わかった度もわくわく度も、「とっても!」が多かったので「よかった!」と思いましした。

江戸川区子ども未来館での活動(1)

新型コロナの影響で、今年に入って1月の活動の後、予定していたいくつかの活動がキャンセルになりました。8月に入って少しずつ自粛が緩和され、今年度の第1回目の活動が行われました。

先陣を切ったのは小林憲正会員で、8月8日の午後に、江戸川区子ども未来館子どもアカデミー夏休みプログラムの一つとして、「宇宙人は左きき?右きき?」という魅力的なテーマで、小学校児童16名に実験授業が行われました。

前半は、パワーポイントのスライドを使って宇宙生物学(Astrobiology)の大きなテーマについてのお話です。宇宙生物学の3つの大きなテーマは、
 1)私たち(地球人)はどのようにしてできたの?
 2)地球以外にも生物はいるの?
 3)わたしたちは、この先、どうなるの?
です。
1)のお話で、生命と非生命の違いとは?という問いかけから始まります。 生物とは生命を有するものですが、そもそも生命とは何でしょうか。 下の写真を見てください。地球上の生物の写真が並んでいます。

次の写真は石ころです。いろいろな色や形がありますが、生物ではないのはすぐにわかりますよね。

https://bulan.co/swings/stone-cushion/より

石ころの次の写真は、二足歩行のロボット「ロビ2」 の写真です( https://prtimes.jp/ より )。人間に近い形をしていて、コミュニケーションもできるようですが、生物ではないですよね。

生命とはなにかと定義するのは、なかなか難しいのですが、ここでは、細胞でできている、ものを取り込んで変化させる(すなわち代謝をする)、子孫を残す(すなわち繁殖する)ものであると定義をしておきましょう。

上の写真にあるような、地球上のいろいろな生物はどのように誕生したのでしょうか。ダーウィンの進化論、ミラーによる放電の実験、オパーリンによるコアセルベートの実験などを示して、地球生命がどのように誕生し、進化してきたのかを説明しました。

それでは、地球以外に生命が存在するでしょうか。質問を投げかけました。「いる」と答えた人が何人かいました。実際はどうでしょう。 今のところ、太陽系の惑星の中に生命の存在の証拠は見つかっていないが、 次のように考えられています。「もっとも生命存在の可能性が高いとされる火星においては、1975年から1976年にかけて行われたバイキング計画において生命探査が行われたが、生命の痕跡を検出することはできなかった。しかし、その後も火星生命の探索は行われている。このほか、地下に海の存在する可能性の高い木星衛星エウロパ土星の衛星エンケラドゥス、液体メタンエタンによる海が存在する土星の衛星タイタンなども生命の存在する可能性があると考えられている。Wikipedia「生命」より」

木星の衛星エンケラドゥス(Wikipediaより)

給水タイムのを取った後の後半は、地球生物の形態や構成する物質の対称性について、実際に手を動かして学びました。まず、前の方のスライドで、ものを取り込んで変化させるという項目に矢印で「タンパク質を使う」とあったことを思い出しましょう。タンパク質は20種類のアミノ酸からなっていますが、地球生物が使っているアミノ酸は、非対称な物質なのです。タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類ありますが、 グリシンを除いていずれもL型なのです。下の図で、Rは側鎖を示し、例えばCH3ならアラニンになります。このことも、地球上の生物は共通の祖先から進化した証拠の一つとされています。

非対称性物質の例として、コガネムシと円偏光版を各テーブルに配り、コガネムシの羽根(液晶) を左と右円偏光板を通して観察すると、どのように違って見えるかを体験してもらいました。不思議なことに、左偏光板を通した場合には、コガネムシの翅の金属光沢の緑色はちゃんと見えるのに、右偏光板を通してみると黒く見えるのです。

これは、コガネムシの翅の表面を覆うキチン質の構造が、左円偏光を生じるようなものであることを示しています。このあたりの詳しいことは、ここここを参照してください。

L型分子とD型分子の違いを実感してもらうために、黒い球に赤、青、緑、白の4つの球を均等につけた場合、2種類のものができること(あるいはそれしかできないこと) を分子模型で試してもらいました。1つは全く同じもの、もう1つは鏡像異性体(下の写真)になります。

以上のような観察・体験から、地球外生命のさまざまな可能性について考えてもらいました。