狛江市立緑野小学校での活動

江尻有郷会員が、12月19日の午前に狛江市立緑野小学校の4年生3クラスの児童に対して、空気と水に関する実験授業を理科室で行いました。

4年生の理科A:物質・エネルギーには、「空気と水の性質」と「金属、水、空気と温度」という内容があります(残りは「電気の働き」)。事前に理科専任の築山英恵教諭と十分な打ち合わせをして、授業の中ですでに多くの空気および水に関する実験は実施済みなので、授業とは異なる観点からの実験授業をすることになりました。

そこで、改めて次の3つの内容の実験を考えて準備を進めました。
1)温度による気体の変動を、線香の煙の動きで観察する
2)水を沸騰させて気化した時の体積の変化を観察する
3)寒剤を使って温度の変化を測定する(演示実験)

最初に少し基礎的なことをお話。まず「空気と水について」
空気は気体ですね。その成分を知っているかな?酸素、炭酸ガスなどの答えが出ます。
一番多いのは窒素ガス(約78%)で、次が酸素ガス(約20%)、炭酸ガスはずっと少なく1%です。これらの混ざったものが空気です。

それでは水は?水は酸素(O)と水素(H)原子の化合物で、H2Oという分子です。通常の温度では水は液体です。

「物質の形は温度で変化する」
物質の形は、気体、液体、個体に分けられます。温度が上昇すると、固体ー>液体ー>気体と変化します。水の場合は、0度で固体、通常の温度では液体、100度になると気体になります。空気の場合は温度をずっと下げてやらないと、液体になったり固体になったりしません(-196度で液体)。

「温度の表し方」
上に書いた0度とか100度というのはセ氏の温度です(°Cと表示)。水が凍るときの温度を0、沸騰するときの温度を100として、100等分しています。

これ以外にカ氏の温度があります(°Fと表示)が、アメリカとジャマイカなどでしか使われていません。科学の分野で使う絶対温度というのもあります。これはすべての分子が動きを止める温度を0として、セ氏でいうと-273度になります(°Kと表示)。ですから0°Cは273°Kになります。

基礎的なことを理解したうえで、実験をしてみましょう。今日は火気を使うので、十分注意してくださいね。髪の毛はまとめ、袖などは火気の上にかざさないように。

でもって1番目の実験です。テーブルの上にビーカー、アルミフォイル、線香、小型カセットコンロが用意されているので、まずビーカーをアルミフォイルでふたをして隙間をなくします。次に線香に火をつけて、線香をビーカーの中にさし入れて、煙をビーカー内に充満させます。あまり多くない方がいいです。ビーカーの底の片隅をカセットコンロの火で熱して、ビーカー内の煙の動きを観察してみましょう。
上の写真はビーカーの底全体を熱しているので、うまく観察できないかも、、。でも端を熱すると、熱した部分から煙が上昇していき、反対側では上昇した煙が下降していくのが見えました。線香の煙は気体が動くのに伴って、動いているのですね。対流です。

2番目の実験では、試験管、ビニール袋、水量測定用注射器、加熱用スタンド、小型カセットコンロ、水を入れる小ビーカーを使います。試験管に5mLの水を注射器で量りとって入れ、ビニール袋で試験管の口をふさぎ、輪ゴムで止めます。この状態ではビニール袋は平らです。
試験管をスタンドのクランプに挟み、試験管の底がコンロの火の上に来るようにして加熱します。試験管内の水の状態を観察します。
最初は小さな泡が底に生じ、やがて水が動き出して大きな泡を出して沸騰します。それに伴ってビニール袋が膨らんでいきます。水が気化して水蒸気となり、それがビニール袋にたまっていったのです。
試験管に残った水を注射器で再び量ってみると、2から3mLでした。ということは、2から3mLの水がビニール袋を膨らませる量の水蒸気になったことになります。
ボリュームがうんと増えたのですね。どうしてこのようになるか、考えてみてくださいね。

3番目の実験は演示実験です。ジュースを凍らせてアイスキャンディーを作るといったので、みんなひときわ興味をそそられ、教卓の周りに集まってきました。
ビーカーに氷を入れ、寒剤として食塩を使います。デジタル温度計のセンサーをビーカー内に入れて温度を測定しながら、試験管にジュースを入れ割り箸を立てて、ビーカーの中に浸します。温度は下がっていき、マイナス7°Cになりました。ジュースは凍りはじめ、シャーベット状になりましたが、アイスキャンディーのように固くはなりませんでした。みんな食べようと思って虎視眈々だったのに残念!

今日は空気と水が温度によってどのように変化するか、実験をして観察しました。
みんな分かったかな。アンケート用紙があるので後で記入して担任の先生に渡してください。それではこれでおしまいです。

最初の2クラスは実験3まで進みませんでした。最後のクラスはちょっと急いだのとアイスキャンディーに惹かれてテキパキやったので3まで進みました。いずれのクラスでも担任の先生と築山先生が補助をしてくれたのでスムースに進みました。

緑野小学校には理科専任の築山英恵教諭が配置されています。そのためか理科室は備品などがよく整頓されて配置され、理科室の環境はとてもよく整備されていると感じました。終了後に校長室で、大場一輝校長先生と築山英恵教諭を交えてお話をした際にそのことを話すと、幸いなことにそうなんです、と言い、さらに司書教諭もいて図書館の利用で効果を上げているとおっしゃっていました(ここを参照)。

理科教育振興のためには(特に小学校には)緑野小学校のように理科専任の教諭が配置されることが望ましいなと感じました。

狛江市立第三中学校での活動

大井みさほ会員が、12月14、15日に狛江市立第三中学校の1年から3年までの全学年の生徒に対して、「光の進み方(光ファイバー)」というタイトルで実験授業を行いました。

14日の2,3限を1年生2クラス、4、5限を3年の2クラスにあて、15日の2、3、4限を1年生の3クラスに当てました。学年によって進度に違いがあるので、ちょうど学び始めた1年生には光の屈折と反射を丁寧に説明し、すでに学んでいる2年生と3年生には復習をしてもらいました。

レーザーを各実験台に1台ずつ配布し、水槽に入れた水をわずかに濁らせてレーザー光のビームを可視化して観察し、ビームの角度によって水の表面で全反射が起こることを確認してもらいました。この全反射の応用として、プラスチックの四角棒中をレーザー光のビームが全反射を繰り返して進むことを示しました。

次いで光ファイバーとLED光源を渡して、光ファイバーによる光の伝達を実験して光通信の原理を体験してもらい、実際に光ファイバーの両側で点滅して、数のあてっこをしてもらいました。これがモールス信号、今ではデジタル信号で通信する原理です。

光の進み方の観察は、授業の中でも実施しているようでしたが、レーザービームの観察が生徒たちの理解にとても役立つように感じました。

ともかく長丁場の活動でした。

狛江市立第六小学校での活動

細矢治夫会員が、12月6日に狛江市立第六小学校で5年生3クラスに対して「分子の形とはたらき」という単元に関連して、折り紙を使って正多面体を作る実験授業を行いました。

準備として、折り紙で作ったさまざまな正多面体を用意しています。

小学5年生では、まだ原子や分子の話は難しすぎるので、まず初めに、数学や折り紙に興味を持っておくと、中学校や高校の理科や化学の学習が楽しく、わかりやすくなるとことを説明しました。

でもって、形を立体的にとらえる方法として、裸眼立体視を試みてもらいました。児童、一人一人に次のような図形を印刷した紙を配布して、両手に持って目の前にかざし、左右それぞれの図を左眼と右眼で見て、真ん中に浮かんだ3番目の図が立体的に見えるように練習します。
すぐに見えるようになる児童もいましたが、なかなかコツがつかめない児童もいました。後は練習ですね。

次に、折紙で多面体(正八面体と正四面体)を皆に作ってもらいました。最初は正八面体のスケルトンです。折り方図は配ってあります。
かなり複雑なので、丁寧に説明をします。
机の間を回って、できていない児童の手助けも、、。
2つのユニットを組み合わせると、正八面体のスケルトンが出来上がり。両手ではさんで息を吹きかけると、くるくると回ります。

ちなみにミョウバンの結晶は正八面体です。飽和水溶液中に細い糸(髪の毛)に種をつけて吊るすと、結晶が成長して正八面体になるはずです。
ミョウバンの結晶のつくり方へのリンク

次は正四面体です。こちらは折り紙(15cm四方)の四角形の上側2cmを切り取り、それを半分にして長さ13cm幅7.5cmの長方形を作ります。
これを使って次の折り方図で作ります。
今度も折り方を説明し、机の間を回って教えていきました。早く分かった児童が迷っている児童に教えている場面が多くみられました。みんなワイワイ、楽しく作っています。

正四面体は有機化学を習うとすぐに出てくるメタンですね。重心に炭素原子があり、そこから4つの頂点に共有結合の腕が伸び水素原子が結合している分子です。折り紙を通して覚えておけば、先に言って学習したときに立体的に捉えやすくなるでしょう。
(分子模型の図はWikipdiaメタンの項目より)

最後にちょっと数字のお遊び。36は6掛ける6、100は10掛ける10、それでは1936は?
数学をちゃんと理解すると、とても楽しくなるし、これからの学習の役に立つのだよと、強調します。最後になってしまいましたが、持ってきたいろいろな形の折り紙を見せて説明。
先生の方が楽しんでいました。

細矢治夫会員が化学と数学についてどんなことを考えているか、興味ある方は下のサイト「カフェ・デ・サイエンス」の第36回から42回の講演のレポートを読むといいかもしれません。
カフェ・ド・サイエンスのトップページへのリンク

大木道則名誉理事長が逝去

本NPO法人「科学技術振興のための教育改革支援SSISS)」の設立者で、名誉理事長の大木道則東京大学名誉教授が、11月23日、心不全のため逝去されました。88歳でした。

fuhou         (平成28年2月27日撮影)

通夜ならびに告別式は12月2日・12月3日に執り行われました。
理事会を代表して、謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

理事長 大井みさほ