八王子学園都市センターでの活動

有山正孝、大井みさほ、廣田 穣、町田武生、和田 勝会員が、11月26日午後に八王子駅前の八王子都市センターのホールで開かれた、第8回八王子市中学校科学コンクールの表彰式に参加しました。

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このポスターでわかるように、八王子市中学校PTA連合はこの企画に大変、力を入れていることが分かります。ポスターのイメージイラストも生徒さんの作品です。

12時から11階の会場で今回、二次審査を通過した37作品がポスター形式で展示されています。1時から12階のホールで表彰式が行われました。開会宣言の後、最初に後藤真弓会長が主催者を代表してあいさつをし、その後、来賓のあいさつとして八王子市教育委員長、中学校校長会の松木中学校長、協賛団体のオリンパス工業の取締役事業執行役員の、ちょっとしたエピソードを入れた含蓄のある挨拶が続きました。
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二次審査を通過したけれど惜しくも最終選考には漏れた32作品の作者に対する表彰式があり、後藤会長から表彰状と副賞が授与されました。

その後、SSISSも審査に協力して最終選考で選んだ、奨励賞、優秀賞、最優秀賞の作者に対して表彰が行われました。奨励賞は3件で、「自作の気圧計による気圧の測定と天気の研究」、「クローバーの葉の動きかた」、「豆苗の収穫を増やす・2016」、優秀賞は1件で、「ジョロウグモの生態について」、最優秀賞も1件で、「織り染め」に適した紙の条件は何か」でした。

それぞれに賞状と副賞を授与して記念撮影。副賞は次の写真にあるようにオリンパスの双眼鏡とデジタルカメラでした。
20161126-3記念撮影後に準備の時間を空けて、奨励賞、優秀賞、最優秀賞のプレゼンテーションが行われました。いずれの演者もパワーポイントを使い、研究の目的、下調べ、実験の方法、結果、考察と手際よくまとめています。それぞれの発表に対してSSISSの会員はコメントをしました。前年度の研究をもとにさらに発展させたケースも多く、興味深く質の高い研究が多かったと思います。発表の雰囲気を伝えるために、1枚だけ写真を載せておきます。
20161126-4最後に5人が壇上に上がり、盛大な拍手を受けていました。

その後、各発表に対する校長先生からの講評があり、最後にくぬぎ台中学校PTAで事業担当の方から参加者その他にお礼があり、会はお開きとなりました。
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対馬市立久田小学校での活動

日江井榮二郎会員は、11月25日の午後に、対馬市立久田小学校で5年生と6年生の児童に対して、太陽の恵みというタイトルで講義授業を行いました。久田小学校の楠本正信校長をはじめ9名の教職員も聴講しました。
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会場は図書室でした。太陽は「母なる太陽」と言われているように、絶え間なく地球に光のエネルギーを送ってくれています。全人類が消費しているエネルギー量の1万倍ものエネルギーを、地球に注いでくれています。しかし人類はまだ、太陽光を十分活用していなように思います。

樹木は太陽の光を受けて、空気中の二酸化炭素と水を葉と根から吸収し、光合成によって栄養となる有機化合物を作り出して、樹木を成長させています。
kougousei-sikumi図はhttp://www.imart.co.jp/technology-front.htmlよりお借りしました。

二酸化炭素の成分である炭素には、軽いものと(炭素12)と重いもの(炭素14)があり、樹木は分け隔てなく吸収して年輪の中に残すので、古い樹木を7000年にわたって調べると、炭素14の変動が見られます。

炭素14は宇宙線が地球の大気中の窒素に衝突してつくられます。太陽が活発の時には太陽からの太陽風に乗って強い磁場が放出されて地球に到達するので、地球に注いでいる宇宙線が入りづらくなってしまいます。宇宙線が注がれにくいと、炭素14は少なくなります。炭素14が少ない時は太陽の活動が激しく、多い時には活動が鈍いという事が分かりました。

その結果、太陽の活動は11年毎に変動を示すが、数百年おきにも大きな変動を起こしていることがわかりました。大きな変動の時には、地球の気候にも影響が現れるので、大きな変動がいつ起こるかを予測したいのですが、今の天文学では予測ができません。それで太陽の研究を続けています。

gingakei-s図はhttp://ada-kitakyu.com/tentai/tentai.htmlよりお借りしています。

太陽は天の川銀河の内でどこに位置しているかを画像で示しました。銀河系の中心を軸として一周するのに約2億年かかるような位置に太陽は存在します。太陽は現在までに銀河系の中心の周りを23回まわっています。人間の年齢と似た年齢の数え方をすると、太陽は23歳であると言えるでしょう。今の太陽は若々しく、活動的な太陽のすがたが観測されています。太陽の中心は「押しくらまんじゅう」のように元素(水素)が強く押し込まれいて、互いに融合して別の元素(ヘリウム)になります(核融合反応)。その時に巨大なエネルギーが放出されます。

このようにして太陽は長い間、輝くことができるのです。白色光で観測された黒点の動画やX線で観測された活動的な現象の動画を見せて、天の川銀河に見られる馬頭星雲、バラ星雲、バレリーナの形をした暗黒星雲、散光星雲、超新星爆発の様子を示すかに星雲、星の死を見せている惑星状星雲の画像を見せ、恒星の誕生、成長、死、それに伴う恒星のガス放出、これらのガスが引力により再び集まり、次世代の星となるという星の生涯に触れました。

暗黒星雲のガスや塵の組成は、水素、炭素、酸素や一酸化炭素、アルコールなどの有機分子であり、これらの化学物質が生物の構成する元素となっています。だから君たちの体の中の水素、酸素、炭素、カルシウムなどは、すべて宇宙で創られたものなのです。

国立天文台製作の宇宙や天の川銀河系の誕生の動画、白色光で見た太陽やX線で観測された太陽の動画、皆既日食動画を見せました。ガモフの不思議な絵を見せ、何を感じ取るかを訊いて、これは正答のない設問であり、将来このような課題に必ず出会うから、その時のために正答のある問題を今のうち解いて、頭を柔軟にしておくようにと話しました。

小学生は元気がよく、質問も多く出ました。最後に国立天文台、すばる望遠鏡、アルマ望遠鏡、TMT計画、太陽観測所のパンフレット、Hα線太陽のシール、ぱたぱたキューブ、パラグアイ皆既日食ファイルを児童に渡し、太陽を見上げた時に今日の話を思い出して、また宇宙のことも考えてとエールを送りました。
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対馬私立豊玉中学校での活動

日江井榮二郎会員が、11月24日午後に対馬市立豊玉中学校の3年生徒25人に「僕たちは星の子」というタイトルで講義授業を行いました。八坂健一校長他教職員6名も聴講しました。

講義の場所は理科室。あらかじめ講義で使うパワーポイントのファイルを担当教員に送っておいたので、生徒は話の内容をある程度、知っていたようで話しやすかったです。
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理科の教科書を見ると、人はみな星の子であることを取り上げています。そこで、元素の周期表に載っている元素は、いつ、どこでつくられたかにまつわる話をしました。

宇宙は微小な超高温・高圧の塊から爆発的に誕生し、その時にさまざまな元素がつくられたと、ガモフは1946年ビッグバン理論を提唱をしました。しかし当時の天文学の主流は定常宇宙論であり、なかなか認められませんでした。それからほぼ20年後の1965年、ガモフの予言していた宇宙背景放射が発見され、ビッグバン理論は広く認められるようになりました。

元素の起源についてはガモフの理論は訂正され、今では軽元素はビッグバンの時に、重元素は恒星の中で、あるいは超新星爆発により創られるという事が分かっています。恒星はどうして輝くのか、また輝き続けるのか、そのしくみを話し、核融合反応により、さまざまな元素が創られたと説明しました。

天の川銀河系に見られるきれいな星雲の映像を見せて、これらのデータから、恒星の一生のシナリオが創られたことを説明し、国立天文台が製作した、宇宙や天の川銀河系の誕生の動画、白色光で見た太陽やX線で観測された太陽の動画、皆既日食動画を見せました。

その後、ガモフの不思議な絵を見せ、何を感じ取るかを尋ねました。これは正答のない設問であり、将来このような課題に必ず出会う、その時のために正答のある問題を今のうち解いて頭を柔軟にしておくようにと話しました。

国立天文台、すばる望遠鏡、アルマ望遠鏡、TMT計画、太陽観測所のパンフレット、Hα線太陽のシール、パラグアイ皆既日食ファイルを生徒一人一人に渡して、宇宙、そして天文学への興味を持ち続けてほしいとエールを送りました。

狛江市立第一小学校での活動

奥田治之会員が、11月25日に狛江市第一小学校で、6年生3クラスの児童に、「冬の星座を探そう 赤い星、青い星」と題して授業を行いました。
20161125-1最初に自己紹介。宇宙科学研究所(JAXAの研究部門)で赤外線による宇宙観測を行っていました。はじめは気球を使い、人工衛星を使うようになります。現在、赤外線衛星「あかつき」が宇宙空間を飛行しています。
20161125-2なぜ宇宙へ望遠鏡を上げなければならないかというと、星からの赤外線は大気に邪魔されて、地上にはほとんど到達しないからです。水蒸気の少ない高地や、大気圏の外に上げた望遠鏡で赤外線を観測し、遠い星からの情報を分析しているのです(赤外線天文学)。

自己紹介はこれくらいにして、星のお話をしましょう。今日のお話のエッセンスは、夜に戸外に出て空を眺め、ぜひ星を観察してほしいということです。冬の空は大気が澄んでいるので、星の観察には絶好の時期です。南の空を見上げるとこんな風に見えるはずです。もちろん星座を示す線などはありませんが、、。
20161125-3中央から少し右下にあるのがオリオン座です。ベルトにあたる横並びの三つ星は見つけやすいですよね。右手にわきにしたにあたるところの星はひときわ大きく、「べテルギウス」という名前で呼ばれています。オリオン座の左方向にあるこいぬ座には「プロキオン」、左下のおおいぬ座の前足の付け根には「シリウス」という名前の星があります。この3つの星はひときわ目立つので、冬の大三角形と呼んでいます。みんなは夏の大三角形は習ったんでしたよね。

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昔の人は、星は空を覆う丸天井に開いた穴だと考えていました。皆はそんな風には思いませんよね。星は太陽と同じ仲間で、恒星と呼ばれます。たとえば太陽は、温度が6000度、大きさは地球の100倍、地球から1.5億キロメートルのところにあります。新型最速新幹線(300㎞/h)だと着くまでに60年もかかる計算です。太陽が石油でできているとすると1万年で燃え尽きてしまう計算ですが、燃え尽きないのは核融合反応でエネルギーを作り出しているからです。

上で述べたオリオン座のべテルギウスは、日本では平家星と呼ばれ、オリオン座は鼓星といいます。確かに形が鼓に似ています。
20161125-7オリオン座のベテルギウスは赤い色ですが、ほかの星は白い色をしています。どうして星の色は異なるのでしょうか。それは星の温度によるのです。
20161125-8温度の低い星は赤く、温度が高くなると黄色になります。太陽がこれにあたります。さらに温度が高くなると青白くなります。

20161125-9上の写真にあるようにべテルギウスは、一等星で地球から600光年も離れたところにあります。つまり今見ているベテルギウスからの光は600年前に星から発っせられたものだということです。赤い色に注目してください。直径は太陽の1000倍もある超巨星です。

いっぽう、プロキオンはベテルギウスよりもずっと近い、11.46光年先にあり、青白い色をしています。大きさは太陽の2.05倍ほどです。

シリウスも青白い星で、大きさは太陽の1.7倍、距離はさらに近くて8.6光年です。
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ちなみにベテルギウスの表面温度はだいたいは3500度、太陽が5700度、プロキオンは6500度、シリウスは9800度で、この順に赤、黄色、青白色となっています。

オリオン座の三つ星の下に、ボーっとした光の塊が見えます。これがオリオン座大星雲です。
20161125-12この大星雲を赤外線で観測すると、、
20161125-13赤い(温度の低い)ガス、塵が見えます。星の生まれる温床なのです。星は、ガス、塵の温床から生まれて赤外線星となり、太陽のような黄色い星となり、ついで白い星となり、最後は膨張して赤色巨星となって爆発して一生を終えます。その後は、白色矮星になる場合もあり、中性子星あるいはブラックホールになる場合もあります。下の写真では中心左のボーっとしたものから反時計回りに回って赤い大きな巨星になります。
20161125-14空を見上げるとたくさんの星が見えます。それらの星はいろいろな色をしています。明るいのも暗いのも、大きいのも小さいのもあります。目に見える星は全天で6000個ほどあります(季節で異なりますが)。
20161125-15ぜひ、自分の眼で夜の空を見上げて、どんな星があるか、その星の色は?何歳ぐらいなのか?など、今日の話を思い出して考えて、調べてください。「自分の眼で見る、自分の頭で考える」が大事なのですから。

お話が終わってから、ブラックホールや、ほかの天体に生命はいるのかなど、たくさんの質問がありました。
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狛江市立和泉小学校での活動(2)

神田久生会員が、11月22日に狛江市立和泉小学校で5年生の2クラスの児童に、物の溶け方と関連して、いろいろな結晶とそのでき方の実験授業を行いました。

始まる前に、いろいろな結晶を教卓に並べて準備します。
20161122-1右端にケイ素の結晶、その左に方解石、テレビ石(ウレキサイト)、水晶、黄鉄鉱などが並んでいます。ダイアモンドもあるんです。

児童が理科室に入ってきました。ご挨拶ののち、自己紹介、「つくば市から来ました、つくばって知っているかな?筑波山は?」手が挙がって半分の児童が知っているようです。
20161122-220161122-3ここからおもむろに結晶のお話へ。まずはみんなに教卓に並べた結晶を見てもらうことに。顔を近づけて見たり、触ったり、、。
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いろいろな結晶を見てどう思ったかな。結晶とは、「原子が規則的に並んだもの」で、「そのため特徴的な形や色などの性質をもつ」のです。次の写真の右下の原子模型のように、結晶では原子が規則的に並びます。
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それでは結晶はどこで見られるでしょうか。身の回りにたくさんあります。海岸の砂浜の砂を拾うと、砂粒の中に小さな結晶がたくさん混ざっています。河原に行っても同様です。一方、ダイアモンドは、特定の鉱山で深い地中から掘り出されます。

庭に置いた水槽が、寒い冬の日に凍っているのを見たことがあるでしょう。氷は水の結晶です。葉っぱに着いた霜も水の結晶です。
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では結晶はどのようにできるのでしょうか。あるいは結晶を作ることはできるのでしょうか。結晶は原子が規則的に並んだものでしたね。水に溶けるもの(例えば食塩)だったら、水に溶かしてやります。そのあとで、食塩分子(実際はイオンですが)が規則的に並ぶようにすればよいのです。つまり、水をゆっくりと蒸発させてやれば、分子は規則的に並びます。
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物質がもうこれ以上は溶けない量を溶解度といい(つまり限界があるのです、正確には1気圧下で一定温度の水100gに溶ける溶質の質量をgで表し、食塩は20度で35.89です)、溶解度まで溶かした水溶液を飽和水溶液といいます。ですから飽和水溶液に近い食塩水を温めて水を蒸発してやれば結晶ができるはずです。

ダイヤモンドのような水に溶けない結晶はどうやって作るのでしょうか。1400度以上で溶かした金属を溶媒としてこれに純度の高い炭素を溶かし、高圧にして結晶を付くrます。そのために大掛かりな装置が必要です。左がダイアモンド、右が水晶の結晶製造機です。
さあ、ここから実験です。いろいろな物質の濃い水溶液を持ってきたのですが、全部はできないので、まず食塩と尿素の結晶を顕微鏡で観察しましょう。
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スライドグラスに一滴、水溶液を落としてドライヤーで乾かした標本があります。
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標本をもらってテーブルに戻り、顕微鏡、ルーペなどで観察します。砂浜から採取した砂もルーペで観察してもらいました。
20161122-13各班ごとに、食塩と尿素の結晶がどんなだったか発表してもらいました。実験ノートをちゃんと取っている児童もいます。
20161122-14こうしたあっという間に45分の授業は終わりました。ありがとうございました。
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補足:
食塩の結晶の成長の様子が次のNHKのページで見ることができます。クリックしてのぞいてみてください。
http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005301099_00000&p=box

狛江市立第二中学校での活動

木下 宙会員が、11月18日に狛江市立第二中学校の2年生4クラス171名に対して、「小惑星探査機 はやぶさの冒険 60億kmの旅」と題した授業を行いました。
20161118-1最初に「新しい太陽系像」についてのお話。現在までの観測をもとにした太陽系は、太陽から外に向かって順に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つの惑星と、海王星の外側にある冥王星を含む5つの準惑星、それと太陽系小天体(小惑星、彗星、その他の塵)から構成されています。
20161118-2惑星のうち、水星から火星までの4つの惑星は地球型惑星と呼ばれ(岩石惑星とも言います)、だいたい地球と同じくらいの大きさの惑星ですが、その外側の木星と土星は大きさがずっと大きく(地球の10倍の直径、巨大ガス惑星と言います)、天王星と海王星も地球よりはずっと大きい(およそ4倍、巨大氷惑星と言います)惑星です。
solar_system_scale-2この図は大きさを比較するために水星から海王星まで並べてあります。太陽からの距離は正しく反映されていません(Wikipediaより)。

上の図の火星と木星の間に小惑星帯があり、多数の小惑星が太陽の周りをまわっています。これ以外に地球の近くを通る小惑星もあります(地球近傍小惑星)。両方を合わせると700,000個を超えると言われています。こんなにたくさんあると、地球にぶつかりそうですが、一つ一つは小さいので、その心配はありません。ただし、6500万年前にユカタン半島近くに衝突した小惑星がありました。その結果、恐竜が滅んだと考えられています。
20161118-3さらに上の図のように、海王星の外側に、太陽系外縁天体がたくさん存在します。

どうしてこのような配置になったかは、太陽系の誕生の歴史が関係しています。太陽系は下の図のようにして誕生しました。
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動画の方がわかりやすいので、ちょっと動画を借りることにします(YouTubeより)。

というわけで、小惑星は惑星になり切れなかった、あるいは原始惑星が壊れた「かけら」なので、その組成がわかれば、太陽系の起源を知る手掛かりになると考えられるのです。

そこで地球近傍小惑星であるイトカワが選ばれました。イトカワは長さ500メートル、幅220メートルで、その軌道は太陽の周りを地球軌道のすぐ内側(近日点)と火星軌道の外側(遠日点)を回るような軌道をとり、狙いやすかったのです。次の図がイトカワ(I)の軌道です(Sは太陽、Eは地球、Mは火星)。
こうして、イトカワにたどり着くための小惑星探査機「はやぶさ」が、2003年5月9日に鹿児島県大隅半島の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。
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はやぶさの旅の目的は、太陽系誕生のなぞを探るために、イトカワ表面のサンプルを持ち帰ることと、新技術であるイオンエンジン、地球によるスイングバイ航法の実証などのためです。
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これがはやぶさの全体像です。青色の太陽電池パネルを両側に広げた全幅は5.7m、本体は1mx1.6mで奥行きが2mの直方体です。手前にイオンクラスターエンジンの4つの噴射孔、上面に通信用のアンテナンが見えます。
018_588xhttp://ascii.jp/elem/000/000/528/528836/より。ここに詳しい解説が書かれています。

一本足のサンプル採取装置が下側に見えます。ここにつながる本体内に採取したサンプルを持ち帰るカプセルが置かれていて、大気圏に再突入した時にも燃え尽きないように工夫が凝らしてあり、着地用のパラシュートも備えています。

打ち上げ後、はやぶさはまずは地球とほぼ同じ軌道にのせられ、2004年5月19日に一回りして地球のすぐそばに到達しました(下の図)。ちなみに、打ち上げの時は化学燃料を使うのですが、宇宙空間に出た後は、イオンエンジンを使います。これは太陽電池で作った電力を利用して、キセノンをイオン化してこれを噴射孔から噴き出すことにより推力を得ます。小さな力ですが宇宙空間ではこれで十分なのです。

地球に最も接近したところで、地球スイングバイ航法を実施します。ちょうどハンマー投げで投擲をするときに、ワイヤをもって振り回して遠くに投げるように、地球の引力(これがワイヤーに相当)を使って振り回して(1回だけですが)、イトカワの軌道に投げ入れるのです。
スイングバイは見事に成功して、はやぶさは地球から離れてイトカワの軌道に入りました。それから1年4か月後の2005年9月12日にイトカワに到着します。ここからははやぶさは、自立誘導航法で地球からの命令がなくてもイトカワに寄り添うように航行します。そして写真を撮影して地球に送って自転しているイトカワ全体の地図を作るとともに、X線や赤外線でも撮影して、惑星がどんな鉱物でできているかのデータも送ります。

こうして得た地図をもとに、着陸に適した場所を決めたら、ターゲットマーカーをその場所に落として、そこを目印にはやぶさの着地を試みます。2005年11月20日と11月26日の2回、試みました。着地をしたらサンプル回収装置内の弾を小惑星表面に向けて打ち出し、その衝撃で表面から舞い上がった破片を吸引して回収します。
NatureダイジェストVol8 No10 Newsより

JAXAサイトより

しかし1回目は足場が悪くて機体が傾き、上の想像図のようにはうまく採取できませんでした。2回目は何とか予定通りに動いて離れましたが、採取できたかどうかは不明でした。ここから、はやぶさはご難続き、数々のトラブルに見舞われます。化学推進エンジンのトラブルがおこり、交信途絶により迷子になり、予定をしていた2007年7月の地球への帰還を断念します。

JAXAの科学者たちは機能回復のためのさまざまな試みを行います。詳しいことは省略しますが、2010年にもう一回りして地球に近づくときに帰還するために、満身創痍のハヤブサ(の太陽電池やイオンエンジン)をだましだまし使い、軌道計算をやり直します。そしてついに6月13日に、はやぶさは地球に戻り、大気圏に再突入しました。

はやぶさの機体は燃え尽き、切り離したサンプルを回収したであろうカプセルがオーストラリアのウーメラ砂漠に、最後はパラシュートで着地しました。再突入からカプセルを切り離すまでの映像がYouTubeにあります。先頭を走る白い小さな球がカプセルです。

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こうしてカプセルは回収され、イトカワから採取した微粒子がカプセル内に入っていることが確認されました。これを解析して小惑星イトカワのデータが得られ始めています。詳しい成果はJAXAのページにあります。

はやぶさの後継機であるはやぶさ2が、2014年12月7日に種子島から打ち上げられました。今度はリュウグウという小惑星を目指します。このような研究の積み重ねで、だんだんと太陽系誕生の秘密が解き明かされていくんですね。夢のあるお話でした。
20161118-8補足:
次のものは、ハヤブサの組み立てからカプセル回収までを描いた、JAXA製作の映像です。

また、はやぶさ君の冒険日記のページがJAXAにあります。その内容がPDFとしてダウンロードできます。読んでみましょう、おもしろいですよ。はやぶさ君の冒険日記(PDF)

ハヤブサの帰還は映画にもなりました。満身創痍で帰還して燃え尽きたはやぶさのことが、感動物語として下のような動画にもなっています。

桐生市桐生文化会館での活動

日江井榮二郎会員が、11月12日に桐生市桐生文化会館で開催された、「美しき地球! 次世代への継承」という講演会とコンサートの催しで、講演を行いました。この催しは、崇禅寺の自然を守る会が主催した創立40周年記念事業です。
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講演の要旨は以下の通りです。
美しき地球も美しき宇宙も、一朝一夕には生まれません。地球は誕生以来、様々な事件に出会ってきました。

シアノバクテリアによる光合成の結果、数億年かけて地球大気には酸素が増加し、オゾン層もできて、太陽からの強力な紫外線が地上に到達しなりました。

そのため、それまで海中で生存していた動植物が地上で活動をはじめることができるようになり、今日見るような地球環境になったのです。
1a_earth01(画像は東京工科大学工学部応用化学科BLOGより)

天の川銀河にも美しい星雲が見られますが、これも138億年の歴史の流れの中で現れたものです。
m83(画像は暗黒星雲博物館より)

この美しい自然をむしばむ地球温暖化ガスを削減することの大切さを述べました。

そして、国立天文台が作成した、宇宙・太陽の動画を見せました(講演のものとは違うかもしれませんが)。

東京雑学大学での活動

日江井榮二郎会員が、11月10日にNPO法人東京雑学大学の公開講座を多摩交流センター会議室で行いました。「陽の光ー太陽の恵み」というタイトルです。東京雑学大学は、生涯学習の推進、まちづくりの推進、文化、芸術、スポーツの振興を図るために、東京西部地域の数か所の会場で、毎週、さまざまな分野で活動する講師を招いて講義を行っている団体です。

会場には25名の参加がありましたが、この公開講座はインターネットを使って中継されていたので、他の会場でも多くの受講者がいたものと思われます。

講演の内容は以下の通りです。
まず宇宙の誕生、その時空間の宏大さ、悠久な時の流れを、国立天文台製作の動画を使って説明し、このような時空間なかで、太陽が誕生し、成長しつつあるという現代天文学の考え方を話しました。

最近のアルマ電波望遠鏡(チリのアンデス山中にあります)による星の誕生の様子や、科学衛星による詳細な太陽活動の観察結果を見せ、これらの現象には、プラズマと磁気との密接な相互作用が見られ、その諸活動の解釈には未だ解決されていない点があることを話しました。
pct_page00-03(写真は国立天文台アルマ望遠鏡のページより)

地上のありとあらゆる生き物は、太陽光のエネルギーを享けて命を保っています。太陽光のエネルギーは太陽定数として理科年表に表示されています。太陽定数というのは、地球大気表面の単位面積(1平方メートル)あたりに1秒間、垂直に入射する太陽の仕事率のことです。この値は、1平方メートル当たり1.35kW、あるいは、1平方センチメートル当たり毎分1.96カロリーです。

人工衛星による測定によると、太陽定数は太陽の11年活動周期に伴ってわずかに変動し、活発な時には静かな時期に比べて約0.1%大きいのですが、その変化量はわずかなものなので、定数として扱われています。
solar-cycle-data(図はWikipediaのImage from Global Artより)

太陽定数は、地球大気の吸収が無い地球大気圏外での値であり、大気や雲などによって反射・吸収され、また入射角があるので、地上に到達したときの値は、その約半分となります。いま、1平方センチメートル当たり毎分1カロリーが地上に到達しているとすると、1坪の面積が2時間太陽光を受けると、そのエネルギーは4千キロカロリーとなります。もし人間が光合成可能な生き物であれば、代謝に必要なエネルギーは、太陽光から十分、得られることになります。
3(葉緑体を体内に持つウミウシの一種。体内に取り込んだ藻の葉緑体で生きていける。写真はここからで、元の写真はEOL Learning and Education Groupより)

経済産業省資源エネルギー庁が発表している平成27年度年次報告書によると、世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は2014年には石油換算で129億トンに達したとあります。これは5.4x10^20ジュールに相当します。一方、地球に注がれる太陽光は1年間で5.4x10^24ジュールに達し、これは全人類が消費しているエネルギー量の1万倍も多いことになります。

太陽光のエネルギーは、未だ十分活用されていないのが現状です。地球温暖化ガス削減に向けて、人間の「チエ」が求められているとおもいます。

八王子市立楢原中学校での活動

有山正孝、江尻有郷、大井みさほ、奥田治之、野津憲治、細矢治夫、町田武生、和田勝会員が吉安信雄氏とともに、11月12日の午前に、八王子市立楢原中学校で1年生約170名を対象に、7つのテーマに分かれて、理科の実験授業を行いました。この日はPTAへの公開授業でもあり、校長、副校長理科担当教員に交じって、父兄の参観もありました。

それぞれのテーマは以下の通りです。
有山・吉安「さおはかり」では、さおばかりを作って、てこの原理を学ぼうというもので、有山会員が用意した材料を使って、生徒はさおばかりを作りました。
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江尻・大井「豆電球とLED」では、豆電球とLEDの電流値を測定し、違いを考えるというもので、電流計を使って測定し、それぞれの特性を考えます。
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奥田「日時計」では、紙で日時計を制作し、戸外でこの日時計を使って実際に時刻がわかるか試してみようというものです。
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野津「地球の歴史」では、地球の歴史年表を作ろうというもので、地球が誕生してから今日までの46億年の歴史と、時々に起こった出来事を書き出していきます。
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細矢「結晶の形」では、折り紙で結晶の形を学ぶのですが、数字が好きな細矢会員のことですから1936の平方根は?(答えは44×44ですが)から始まって、4、6、8、12、20正多面体とその組み合わせによる多面体(例えば立方八面体)へと発展し、結晶構造に迫るというものです。20161112-11 20161112-12 20161112-13

町田「体の中のつくりを見る」では、プレパラートを顕微鏡で観察して、細胞・組織・器官の成り立ちを理解し、そのはたらきを学ぼうというものです。
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和田「ゾウリムシを調べる」では、元気に泳ぐゾウリムシを顕微鏡で観察し、どんな風に、何を使って泳ぐのかを理解し、単細胞生物のゾウリムシでも動くし、食べるのだということを学びます。20161112-16 20161112-17 20161112-18
間に休み時間を置きましたが2コマ続きの授業で、最後にアンケートを書いてもらい、後片付けをして実験授業を終えました。

控室の戻って、PTAの方々からお茶とお菓子の接待を受けて、ほっと一息という場面です。
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写真はすべて、八王子市中学校PTA連合会副会長久保 淳氏の撮影したものをお借りしました。

板橋区立板橋第二中学校での活動

町田武生会員が、11月9日午後に、板橋第二中学校で開催された板橋区立中学校教育研究会主催の第3回理科教育研究授業と協議会に参加し、理科の実験授業を参観し、その後の協議会で指導・助言を行いました。参加した教員は岡村克也理科部会長をはじめとした65名で、今回は特に多くの理科教員が参加しているとのことでした。

この日の授業は、2年の生徒36名に対する「動物の生活と生物の変遷」の中の「動物の体のつくりと働きー刺激と反応」で、トリの手羽先を使って理解させるというもので、骨の動きと筋肉の関係を、手羽先を解剖しながら確認していきます。次の動画にあるようなものです(静岡県総合教育センターのページより)。
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上の図をクリックすると、解剖の手順のスライドをみることができます。また、同じ教育センター作成のPDFファイルはここにあります。

実験授業は、よく練られた指導案に基づいて行われ、生徒に対しても適切に指導がなされていました。ただ、受ける側の生徒に集中力を欠ける態度が見られたり、観察記録の内容が不十分だったりする点が見受けられ、改善の必要があることを指摘しました。

また、解剖に刃物を用いる際の危険防止のための注意と、清潔に行うために配慮すべき点を、事前に述べるべきであると指摘しました。

その後、最近の生徒の理科研究には論理性の破綻や、根拠のない推論が多くみられることを例に挙げ、筋道を立てた論理的な理科の授業のための改善の方法などを講演しました。ふだんの授業のなかで、理にかなった「ものの考え方」をして行動することの重要性を認識してもらえたのではないかと思います。