狛江市立第二中学校での活動

木下 宙会員が、11月18日に狛江市立第二中学校の2年生4クラス171名に対して、「小惑星探査機 はやぶさの冒険 60億kmの旅」と題した授業を行いました。
20161118-1最初に「新しい太陽系像」についてのお話。現在までの観測をもとにした太陽系は、太陽から外に向かって順に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つの惑星と、海王星の外側にある冥王星を含む5つの準惑星、それと太陽系小天体(小惑星、彗星、その他の塵)から構成されています。
20161118-2惑星のうち、水星から火星までの4つの惑星は地球型惑星と呼ばれ(岩石惑星とも言います)、だいたい地球と同じくらいの大きさの惑星ですが、その外側の木星と土星は大きさがずっと大きく(地球の10倍の直径、巨大ガス惑星と言います)、天王星と海王星も地球よりはずっと大きい(およそ4倍、巨大氷惑星と言います)惑星です。
solar_system_scale-2この図は大きさを比較するために水星から海王星まで並べてあります。太陽からの距離は正しく反映されていません(Wikipediaより)。

上の図の火星と木星の間に小惑星帯があり、多数の小惑星が太陽の周りをまわっています。これ以外に地球の近くを通る小惑星もあります(地球近傍小惑星)。両方を合わせると700,000個を超えると言われています。こんなにたくさんあると、地球にぶつかりそうですが、一つ一つは小さいので、その心配はありません。ただし、6500万年前にユカタン半島近くに衝突した小惑星がありました。その結果、恐竜が滅んだと考えられています。
20161118-3さらに上の図のように、海王星の外側に、太陽系外縁天体がたくさん存在します。

どうしてこのような配置になったかは、太陽系の誕生の歴史が関係しています。太陽系は下の図のようにして誕生しました。
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動画の方がわかりやすいので、ちょっと動画を借りることにします(YouTubeより)。

というわけで、小惑星は惑星になり切れなかった、あるいは原始惑星が壊れた「かけら」なので、その組成がわかれば、太陽系の起源を知る手掛かりになると考えられるのです。

そこで地球近傍小惑星であるイトカワが選ばれました。イトカワは長さ500メートル、幅220メートルで、その軌道は太陽の周りを地球軌道のすぐ内側(近日点)と火星軌道の外側(遠日点)を回るような軌道をとり、狙いやすかったのです。次の図がイトカワ(I)の軌道です(Sは太陽、Eは地球、Mは火星)。
200px-itokawa-orbit_svgこうして、イトカワにたどり着くための小惑星探査機「はやぶさ」が、2003年5月9日に鹿児島県大隅半島の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。
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はやぶさの旅の目的は、太陽系誕生のなぞを探るために、イトカワ表面のサンプルを持ち帰ることと、新技術であるイオンエンジン、地球によるスイングバイ航法の実証などのためです。
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これがはやぶさの全体像です。青色の太陽電池パネルを両側に広げた全幅は5.7m、本体は1mx1.6mで奥行きが2mの直方体です。手前にイオンクラスターエンジンの4つの噴射孔、上面に通信用のアンテナンが見えます。
018_588xhttp://ascii.jp/elem/000/000/528/528836/より。ここに詳しい解説が書かれています。

一本足のサンプル採取装置が下側に見えます。ここにつながる本体内に採取したサンプルを持ち帰るカプセルが置かれていて、大気圏に再突入した時にも燃え尽きないように工夫が凝らしてあり、着地用のパラシュートも備えています。

打ち上げ後、はやぶさはまずは地球とほぼ同じ軌道にのせられ、2004年5月19日に一回りして地球のすぐそばに到達しました(下の図)。ちなみに、打ち上げの時は化学燃料を使うのですが、宇宙空間に出た後は、イオンエンジンを使います。これは太陽電池で作った電力を利用して、キセノンをイオン化してこれを噴射孔から噴き出すことにより推力を得ます。小さな力ですが宇宙空間ではこれで十分なのです。

地球に最も接近したところで、地球スイングバイ航法を実施します。ちょうどハンマー投げで投擲をするときに、ワイヤをもって振り回して遠くに投げるように、地球の引力(これがワイヤーに相当)を使って振り回して(1回だけですが)、イトカワの軌道に投げ入れるのです。
hayabusa_trj_1スイングバイは見事に成功して、はやぶさは地球から離れてイトカワの軌道に入りました。それから1年4か月後の2005年9月12日にイトカワに到着します。ここからははやぶさは、自立誘導航法で地球からの命令がなくてもイトカワに寄り添うように航行します。そして写真を撮影して地球に送って自転しているイトカワ全体の地図を作るとともに、X線や赤外線でも撮影して、惑星がどんな鉱物でできているかのデータも送ります。
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こうして得た地図をもとに、着陸に適した場所を決めたら、ターゲットマーカーをその場所に落として、そこを目印にはやぶさの着地を試みます。2005年11月20日と11月26日の2回、試みました。着地をしたらサンプル回収装置内の弾を小惑星表面に向けて打ち出し、その衝撃で表面から舞い上がった破片を吸引して回収します。
itokawalanding1NatureダイジェストVol8 No10 Newsより
s02_p01JAXAサイトより

しかし1回目は足場が悪くて機体が傾き、上の想像図のようにはうまく採取できませんでした。2回目は何とか予定通りに動いて離れましたが、採取できたかどうかは不明でした。ここから、はやぶさはご難続き、数々のトラブルに見舞われます。化学推進エンジンのトラブルがおこり、交信途絶により迷子になり、予定をしていた2007年7月の地球への帰還を断念します。

JAXAの科学者たちは機能回復のためのさまざまな試みを行います。詳しいことは省略しますが、2010年にもう一回りして地球に近づくときに帰還するために、満身創痍のハヤブサ(の太陽電池やイオンエンジン)をだましだまし使い、軌道計算をやり直します。そしてついに6月13日に、はやぶさは地球に戻り、大気圏に再突入しました。

はやぶさの機体は燃え尽き、切り離したサンプルを回収したであろうカプセルがオーストラリアのウーメラ砂漠に、最後はパラシュートで着地しました。再突入からカプセルを切り離すまでの映像がYouTubeにあります。先頭を走る白い小さな球がカプセルです。

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こうしてカプセルは回収され、イトカワから採取した微粒子がカプセル内に入っていることが確認されました。これを解析して小惑星イトカワのデータが得られ始めています。詳しい成果はJAXAのページにあります。

はやぶさの後継機であるはやぶさ2が、2014年12月7日に種子島から打ち上げられました。今度はリュウグウという小惑星を目指します。このような研究の積み重ねで、だんだんと太陽系誕生の秘密が解き明かされていくんですね。夢のあるお話でした。
20161118-8補足:
次のものは、ハヤブサの組み立てからカプセル回収までを描いた、JAXA製作の映像です。

また、はやぶさ君の冒険日記のページがJAXAにあります。その内容がPDFとしてダウンロードできます。読んでみましょう、おもしろいですよ。はやぶさ君の冒険日記(PDF)

ハヤブサの帰還は映画にもなりました。満身創痍で帰還して燃え尽きたはやぶさのことが、感動物語として下のような動画にもなっています。

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